近年、セキュリティに対する意識の高まりとともに、顔認証(顔認識)システムは多くの分野で注目を集めています。このシステムは、顔の特徴を分析して個人を特定する生体認証技術の一つであり、その精度と利便性から、さまざまな場所での導入が進んでいます。
本記事では、顔認証システムの基本的な仕組み、特長、具体的な活用事例などについて詳しく解説します。
顔認証とは、データベースに登録された顔の情報と、カメラが検知した顔の画像や映像を照らし合わせて本人確認をするもので、顔の特徴点を抽出して個人を認証する生体認証のひとつです。生体認証には、顔のほか、虹彩、指紋、静脈、音声などを利用するものもあります。
顔認証システムは、近年急速な発展を遂げるAIの技術であるディープラーニング(深層学習)の進化によってその精度をあげており、現在さまざまな分野で活用が進んでいます。
では顔認証システムがどのように顔を認識し、本人確認をしているのか、その仕組みを見ていきましょう。
取得した画像や映像と登録しているデータを照合する際、1対1と1対N(複数)で認証する2つの方法があります。
顔認証システムの主な特長としては、次の点が挙げられます。
顔認証の大きなメリットのひとつは、本人確認の手法として、他に比べてセキュリティレベルが高いという点です。例えばパスワードの場合、パスワードが漏えいしたり、他人に使いまわされたりするリスクがありますが、顔認証ではそうした懸念はほぼありません。また、ICカードのように他人のカードを使って本人確認をする「なりすまし」も防ぐことができます。
パスワードやICカードは、紛失したり、忘れてしまったりするリスクがありますが、この点に関しても本人の顔であれば心配はありません。顔認証であれば、カードを紛失した際の不正利用の懸念もなくなり、また、ICカードを忘れた際の仮カード発行などの手間も不要になります。
本人確認する際の利便性の良さも、顔認証の大きな強みです。例えば入退室管理で顔認証を用いると、ICカードや指紋認証のように、わざわざ出入り口で立ち止まる必要がありません。カメラの前で立ち止まらずに認証できるウォークスルー認証により、両手がふさがっていても、そのまま歩いて通り過ぎるだけで本人確認をすることができます。また、金融機関で口座を開設する際、以前は顧客がわざわざ店舗まで行く必要がありましたが、顔認証を導入することで、オンラインで手続きを完結することができます。
同じ生体認証の指紋認証などと異なり、顔認証システムでは、一般的に専用のカメラや機器が不要です。機種や用途によっては、カメラ付きパソコンにシステムを実装するだけで利用でき、導入のハードルが比較的低いといえます。
顔認証はカメラで顔の画像をとらえることで本人確認のための情報をキャッチできるため、ICカードや指紋認証のように何かに触れる必要がなく、より衛生的に本人確認を実行できます。
顔認証システムは、個人宅から企業、公共機関まで、幅広いスケール、シーンでの導入が可能です。特に大人数の認証を必要とする場面においてはその効率の良さから他の生体認証よりも大きな効果を発揮します。
顔認証と聞いて、真っ先にスマートフォンのログインを思い浮かべる方も多いでしょう。しかし、近年ではスマートフォンのログイン以外にも利用シーンが急速に広がっています。以下、代表的な活用事例を紹介します。
顔認証を用いた勤怠管理は、顔認証システム導入の代表例ともいえ、多くの企業で実際に利用されており、出退勤の打刻をハンズフリー且つウォークスルーで行うことができます。
人の出入りを厳密に管理する必要があるセキュリティエリアの入退室管理でも、高い認証精度を誇る顔認証の導入事例が数多くあります。IDカードなどを併用した認証方法を用いることで、より厳密な本人確認も可能です。
最近ではセキュリティレベル向上のために、パソコンやシステムへのログイン方法を見直す企業や自治体が増えています。従来のIDとパスワードに顔認証を加え、二要素認証を活用したログインでセキュリティを強化する動きが広がりつつあります。
空港ではもうおなじみの顔認証による旅客の身元確認は、セキュリティチェックを迅速かつ安全に実行することができます。また最近では駅の改札など公共交通機関における顔認証の導入実証も進んでいます。
金融機関のアプリケーションなどに顔認証システムを導入することで、リモートで口座を開設することができます。利用客からアプリを通じて書類や顔写真を金融機関に送信してもらうことで、わざわざ店舗に出向むいてもらうことなく、本人確認の手続きをすることが可能です。
製造業の現場における品質管理に関しても、検査資格を持った担当者が顔認証でログインする仕組みが実現しています。顔認証を用いることで、秒単位の時間管理が必要な生産現場でログインの時間を短縮することができ、生産性の向上と品質管理の厳密化に貢献しています。
迷子やブロックリストの検出および追跡、VIP顧客の認識など、さまざまな用途で効果を発揮します。これにより、商業施設はより安全で快適な環境を提供できるようになります。
顔認証を用いた決済サービスも始まっています。これは、例えばオフィス内に設置された店舗などでの導入が想定されていて、店舗で買い物をする社員の顔情報を事前に登録し、購入した金額を給与から天引きする仕組みです。今後はコンビニなどの無人化が進むことも予測されており、決済の本人確認に顔認証を用いるケースは増加していくことが考えられます。
サイバーリンクの AI 顔認証 FaceMe は国内外において数多くの導入実績を誇ります。最後にその中から3つの事例を紹介します。
CACではミニストップポケットの決済システムに FaceMe® SDK を組み込み、従業員の給与口座と連携。 顔データを登録することで、従業員は顔認証による精算サービスを利用でき、支払いのプロセスがシンプル且つスピーディになりました。
詳しい内容はこちら: CAC、無人コンビニ「ミニストップポケット」にてFaceMeを活用した顔認証決済サービスを導入
日本のソリューションプロバイダー(FaceMe パートナー)は、FaceMe® SDKを官公庁向けの二要素認証ログインソフトウェアへと統合しました。 公務員が機密情報を含む業務用パソコンへのアクセスや、画面ロックを解除する場合、アカウントのパスワードやIDカード識別に加え、顔認証を活用することで、セキュリティレベルと機密情報の管理体制が強化されました。
詳しい内容はこちら: 官公庁・自治体などにてFaceMe® 顔認証による二要素認証を導入
台湾大手石油化学会社は、毎日5,000人以上の従業員の出入りがある本社ビルへFaceMe® Security を導入。合計約250台のIPカメラをサポートすることで、複数の棟の各フロアで入退管理を行うことが可能になりました。また FaceMe は、角度のついた状態、遠距離、歩行中、マスク着用時でも、高速且つ正確な顔認証が可能なため、スムーズなウォークスルー認証を実現しました。
詳しい内容はこちら: 台湾の大手石油化学会社、FaceMe®Securityを導入し、 AI 顔認証でウォークスルーによる入退室・勤怠管理を実現
顔認証システムは、AI技術の発展とともに精度が向上し、さまざまな分野での活用が進んでいます。
顔認証の特長としては、高いセキュリティレベル、紛失や忘れるリスクがない点、利便性の高さ、専用デバイスが不要であること、接触せずに本人確認ができること、そしてさまざまなシーンで活用できることが挙げられます。これにより、入退室管理や勤怠管理、パソコンやシステムへのログイン、空港や公共交通機関の本人確認、口座開設、小売店での決済など、多岐にわたり利用シーンが広がっています。
導入実例として、コンビニでの決済や官公庁・自治体での二要素認証、オフィスの入退室・勤怠管理があり、これらの事例は顔認証システムの実用性と効果を示しています。
顔認証システムは今後も、セキュリティ向上や利便性の面でますます重要な役割を果たしていくでしょう。その進化により、より多くの分野での導入が期待され、私たちの生活にさらなるメリットをもたらすことが予想されます。
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