近年、顔認証の需要はますます高まり、さまざまな場所に活用が広がっています。スマートフォンのロック解除や決済等の場面で、顔認証を行ったことがある方も多いことでしょう。
しかしながら、顔認証の可能性はスマートフォンでの使用にとどまりません。既に様々な業界で、安全性やセキュリティの向上、作業の効率化などの用途で活用され、多くのメリットをもたらしています。
顔認証のテクノロジーをより効果的に活用するためには、顔認証について、深く知ることが必要です。本稿では、顔認証の仕組み、設置や最適化の手法、技術的に考慮するべき仕様や実際の使用用途、将来的な可能性などについて、解説します。
顔認証は、顔の特徴点を抽出して、事前に登録された個人情報と照合する生体認証技術です。この技術は以前から存在しており、例えばサイバーリンクが10年以上前に開発したWebカメラを用いた写真・動画撮影ソフトウェア「YouCam」では、PCへのログインに顔認証の技術を利用しています。当時はデジタル信号処理(DSP)技術に限界があり、顔認証には正面からの完全な画像が必要でした。しかし、近年のディープニューラルネットワーク(DNN)に基づくAIテクノロジーの発展によって、精度が劇的に向上しています。
顔認証のテクノロジーは、独自のAIアルゴリズムを活用して、鼻の高さや幅、額の大きさ、目の形など様々な顔の特徴点を測定して、特徴点情報をテンプレートとして作成します。この個人毎に生成されたテンプレートと、事前に保存登録されたテンプレートを比較する事によって個人を特定しています。
サイバーリンクは長年にわたり培ってきた顔認証の専門知識をさらに発展させ、ディープラーニングとニューラルネットワークを使用したAIベース顔認証エンジンであるFaceMe®をリリースしました。また、継続したAIモデルの強化によってテクノロジーを発展させ続けており、世界で最も柔軟かつ、高セキュリティ高精度なエッジベース顔認証ソリューションの1つとなっています。
顔認証は、高度なAI生体認証技術を用いています。顔検出や顔認証だけではなく、顔の情報を用いて様々な目的で活用する事が可能となっています。
顔認証エンジンの主な機能:
顔検出は顔認証で行う最初のステップです。このステップでは、画像全体をスキャンして、人間の顔の全部または一部が含まれているかを確認します。高速で正確な顔検出は、顔認証プロセス全体のパフォーマンスを確保するために重要なステップです。FaceMe®では、一度に複数の顔を検出し、存在する顔の数をカウントし、それぞれの顔を個別に検出することができます。
特徴点抽出は、顔検出に続くステップです。顔認証エンジンは、顔画像からn次元のベクトルセット(テンプレート)を抽出します。高い精度を実現するためには、非常に高い”n”値のベクトルセットが必要です。個人の顔から抽出されたテンプレートは、照合または検索をするために使用されます。
新規に抽出されたテンプレートは、事前にデータベース登録されたテンプレートと照合されます。1:N検索では、個人のテンプレートをデータベース全体と照合し、一致するテンプレートを見つけて個人を特定します。FaceMe®のテンプレートは特徴点情報のみを暗号化した状態で保存します。また、プラットフォームを通じた実際の顔画像データを保存する必要が無い為、個人情報である取得した顔情報を保存することなく、認証機能を用いることが可能です。
こうした顔の検出、認証などの他にも、機能を追加することで、次のようなことも実現できるようになります。
顔属性検出は、年齢、性別、表情、頭の向きや動き(頷き、頭を振る)といった特性を識別して分析する機能です。この機能によって、顧客に合わせてカスタマイズされた広告やメッセージを提供したり、詳細な訪問者統計を収集したりすることができるようになります。そのため、スマートリテールやデジタルサイネージを用いたマーケティングなどに多く活用され、欠かせない機能となっています。
新型コロナウイルスの感染が落ち着いた後も、日本では変わらずマスクを着用する人が多数派となっていて、医療機関など、引き続きマスク着用が推奨されている場所もあります。こうした状況下において、マスク検出は、非常に重要性の高い機能の1つです。FaceMe®はマスク着用時に最適化された顔認証を提供しており、例えばマスク着用が必要な場所で、マスクをしているかどうかを見分ける「マスク検出」が可能です。また、鼻と口がマスクで適切に覆われているかどうか(正しく装着できているか)を確認すると同時に、マスクを着用したままで高精度の本人確認を行う事ができます。
なりすまし防止テクノロジーは、他人の写真やビデオをカメラの前に置くなど、悪意のあるなりすまし攻撃を検出して保護するためのものです。2Dおよび3Dカメラを使用して正確に生体検出を行い、なりすましによる誤った認証を防ぐことができます。
2Dカメラ(通常のUSB Webカメラなど)を使用する場合、なりすまし攻撃はインタラクティブな手法と非インタラクティブな手法で検出されます。インタラクティブな手法では、顔や頭の動きを指示する事により自然な反応を検出して、実際の人間かどうか判断します。非インタラクティブな手法では、顔認証ソリューションプロバイダーが独自の顔認証AIアルゴリズムで判断します。
3Dカメラを使用する場合は深度を検出し、非常に短時間でなりすまし防止による生体検出を可能にします。この場合インタラクティブな検出・認識手法は必要ありません。しかし、3Dカメラはより優れた機能を持つ一方でコストがかかります。FaceMe®は2Dカメラを使用する場合でも、わずかなコストで正確ななりすまし防止を提供することができます。また、様々な2D/3Dカメラをサポートしており、Intel RealSense、iPhone/iPad(Face IDカメラ)、Orbbec、Himax、Altek、eYs3Dなどの各種3Dカメラと互換性があります。
正確な顔認証エンジンは該非合致率(FNMR)が低く、誤合致率(FMR)が非常に低いという特徴があります。該非合致とは、同じ人物の顔を一致させることに失敗すること、すなわち、登録データと照会データが同じ人物のものであるにも関わらず、他人同士のデータであると誤って判定されてしまう比率です。誤合致とは、ある人の顔が他の人と一致すること、すなわち照合データと一致しない人物の登録データにも関わらず、誤って同一人物と判定されてしまう比率です。
顔認証アルゴリズムのパフォーマンスを評価する政府機関としては、アメリカ国立標準技術研究所(NIST)が有名です。NISTの顔認証ベンチマークテスト(FRVT)は、VISA、VISA Border、Mugshot、WILDという4つのテストでアルゴリズムのパフォーマンスを評価します。
VISAでは、パスポート写真に基づいて個人を識別する機能をテストします。VISA Borderでは、VISA画像をWebカメラ画像と比較します。Mugshotでは、顔正面の画像のみですが、12年以上おいて撮影された2枚の同じ人物の画像を一致させます。WILDでは、ランダムで様々な角度から撮影された画像を使用します。
FaceMe®は、1E-4 (FNMR 0.3%、FMR 1/10000)で99.7% の認識率を誇り、NIST VISAテストで最高レベルの評価を得たエンジンの一つです。また、Visa Border(1E-6で99.06%)およびWILD(1E-5で96.88%)でも最高レベルの認識率を誇ります。参考までに、スマートフォンのFace IDの精度は1E-4で96%です。
アルゴリズムだけではなく、カメラの解像度、位置、照明、レンズの汚れ、またカメラの種類といった要素も精度に影響します。顔認証エンジンは通常、720pのカメラから動作しますが、一般的な用途には1080pの解像度が推奨されています。一部の低品質なカメラでは、角度のついた顔の映像を正確に読み取る事ができないため、適切な照明で被写体が真正面を向いている映像を使用する必要があります。そしてもちろん、カメラのレンズは常にクリアでなければなりません。
顔認証は、MicrosoftやAmazonなどのクラウドベースの外部APIソリューションを使用する方法と、SDKのライブラリを使用してエッジデバイス内に統合実装する方法があります。それぞれのアプローチには異なる利点がありますが、エッジベースの顔認証は速度、セキュリティ、価格、柔軟性、および汎用性の面において非常に優れています。
インターネットを経由してクラウドサービスプラットフォーム上で顔認証を行う場合、大量のネットワーク帯域幅が必要となるため、データ転送にコストがかかり、従量課金で高価となる懸念があります。
また、この方法だと、顔認証に使用するデータ(完全な顔写真)はインターネット経由で送信されるため、脆弱なシステムを経由する事でハッキングや情報漏洩、他者にデータを保存される可能があり、セキュリティリスクが伴います。このようにインターネット経由でのデータ送信が必要となるクラウドシステムではセキュリティ的に閉じたシステムを構築する事ができません。
一方で、クラウドに展開する場合は大規模なハードウェアを必要としないという利点もあります。ビジネスが既に完全にオンラインで運営されている場合、クラウドベースの顔認証は導入しやすく、選択肢として最適ともいえます。また、従来はエッジ向けのAIチップセットが利用できない、パフォーマンスが十分ではない、手ごろな価格ではないといったケースもあり、多くのソリューションがクラウドベースの顔認証を使用して構築されていました。クラウドベースの顔認証ソリューションプロバイダーとしては、(1)Microsoft AzureのFace APIパッケージ、 (2)GoogleのVision AI、(3)AWS上の Amazon Rekognition などがあります。
スマートIP対応ドアベルなどの中小企業やホームセキュリティシステムといった小規模な導入の場合、帯域幅確保とクラウド処理のコストが高くなりすぎないように注意する必要があります。
エッジベースでの顔認証とは、ローカルデバイス側に顔認証テクノロジーが組み込まれているものを指しています。スマートロック、モバイルデバイス、POSシステム、インタラクティブキオスク、デジタルサイネージなどがこれにあたります。エッジデバイスは、クラウド処理や大きなファイルの送信による遅延なしに、正確な顔認証を即座に実行できます。実際に外部の顔データベースにアクセスするようなケースを除いて、ネットワーク又はクラウドに接続する必要はありません。またそのようなネットワーク上の外部データベースへのアクセスが必要な場合においても、エッジデバイスから暗号化された小さなサイズのテンプレートを送信して、データベース上のテンプレートと比較を行う為、数ミリ秒以内で安全な顔認証処理を可能にします。
新規に顔認証ソリューションを立ち上げる場合、これらのIoTデバイス等を使用したエッジベース顔認証アプローチは比較的導入しやすい手法といえるでしょう。金融関連業界などの高いセキュリティレベルが要求されるソリューションの場合は、インターネットやネットワーク接続を許可する事が出来ないため、エッジベースでの顔認証システムが非常に適しています。
コスト、柔軟性、拡張性に優れたエッジベースの顔認証は、多くのエンドユーザーにとって最適な選択肢であるといえるでしょう。
エッジベースの顔認証ソリューション開発キットのひとつとして、サイバーリンク FaceMe® SDK(Software Development Kit)をご紹介します。このSDKを使用すると、様々なエッジデバイスへ簡単に顔認証機能を統合する事が可能となります。FaceMe®は、市場の幅広いハードウェアやOSをサポートしており、高精度なAIエンジンは、NISTの顔認証ベンダーテスト(FRVT)で最高ランクのエンジンの1つに位置付けられています。テクノロジーの絶え間ない進歩により、幅広い業界に展開するための最高の精度とセキュリティ基準を満たしています。FaceMe®は、セキュリティ、アクセスコントロール、公共サービス、スマートバンキング、スマートリテール、スマートシティ、ホームセキュリティなど様々な場面で活用することができます。
(エッジデバイスでの顔認証テクノロジーについて、(1)コスト、(2)速度、(3)安定性 についてご案内します。
エッジとクラウドのどちらを選択するかはシステム設計上の重要な決定事項となります。通常の場合、高精度なAI処理には高いパフォーマンスが必要となり、クラウドコンピューティングは決して安価ではありません。クラウドは通常、認識された顔の数やトラフィックで料金が請求されるため、エッジデバイスは、多くの場合、クラウドよりもコスト面で有利となります(1時間あたり数名の数を認識するような、非常に小規模な利用の場合はクラウドベースの方が安価となる可能性があります)。近年、AIチップの価格は下がり続けているため、エッジベースのソリューションは将来的にもコスト上の利点が続く可能性が高く、持続的な利用を実現できる可能性が高まります。
速度に関しては、現在最高性能の顔認証アルゴリズムはミリ秒単位で顔認証を処理します。エッジベースのソリューションは速度面では最高ランクで、クラウドベースのソリューションを数桁上回っています。企業が顔認証の実装をどのように検討しているかにかかわらず、処理速度は重要な指標になります。多様化する顔認証用途において、即時性でクラウドはエッジに太刀打ちする事は難しいでしょう。
例えばブラックリストに登録された個人を特定する場合、特定に時間がかかり少しの遅れが生じるだけで、取り返しのつかない被害が発生する可能性があります。認証に要する時間が長引けば長引くほど、大きなリスクを抱える懸念が生じてしまいます。
インターネットサービスに依存しないことは、通信の切断や低帯域といったネットワーク障害の影響を受けないことを意味します。例えば、クラウドベースの顔認証ソリューションを使用していて、ネットワーク障害で自宅のドアロックが機能しなくなった場合を想像してみてください。エッジベースの顔認証には、そのようなネットワーク上の問題に起因する脆弱性はありません。
その優位性と大きなイノベーションにより、エッジベースのAIテクノロジーは、今後の顔認証の発展に向け重要な推進力となるでしょう。この記事の残りの部分では、エッジベースの顔認証に焦点を当ててご案内します。
顔認証エッジデバイスを構築する場合、最も重要なポイントとなるのが、適切なチップセットやハードウェアを選択することです。コストやパフォーマンス、用途や目的に基づいてプラットフォームを決定する必要があります。例えば、ハイエンドのNVIDIA GPUは非常に高価ですが、多数のビデオチャンネルを同時に処理する事が可能なため、大規模な施設を監視するケースなどでは、最も大きなコスト要因であるワークステーションの台数を減らすことができます。一方、MediaTekやBroadcomなどの低コストなIoT/モバイルデバイス向けSoCチップは、1秒あたり約5フレーム程度の処理、正面の顔認証の用途のみ使用可能という限られたパフォーマンスですが、ドアアクセスなどの用途には十分な能力を持っており、広く手ごろな価格で利用できます。
このように、どのような場所でこのような使い方をするかによって、それぞれにあったものを選択する必要があります。
顔認証の最適化に最も重要なのは、AIチップもしくはAI処理を行うSystem-on-Chip(SoC)です。Intel、NVIDIA、MediaTek、NXP、Qualcommなどのメーカーから豊富なチップセットオプションが提供されており、それぞれが用途に応じて独自の利点を持っています。各チップセットは、様々な計算能力、フォームファクター、消費電力に向けて設計されており、独自のAI推論エンジンアクセラレターを備えている場合があります。
NVIDIA、Intel、Qualcomm、MediaTek、NXPなどの主要なチップセットメーカーは、AI on EdgeとIoTの需要の高まりに対応して、APU(AI Processing Units)、VPU(Vision Processing Units)、NPU(Neural Processing Units)などの新しいハードウェアを急速に市場に登場させています。これらはすべて、パフォーマンスと消費電力を最適化しながら、画像処理とAI推論を高速化する事ができます。
以下の表は、FaceMe®を含む多くの顔認証エンジンと統合されたSoC、GPU、VPU製品の一覧です。これらはほんの一部ですが、幅広いオプションがあることがわかります。
これらのチップは、ハイエンドなハードウェア機器とより高度なAI処理に最適化されて設計されています。これらのチップを使用して顔認証システムを構築する場合は、別途CPUが必要です。
これらのチップは、ハイエンドなハードウェア機器とより高度なAI処理に最適化されて設計されています。これらのチップを使用して顔認証システムを構築する場合は、別途CPUが必要です。
それぞれのチップセットは、特定のオペレーティングシステム(OS)で動作するように設計されていることがあります。優れた汎用性の高い顔認証エンジンは、できるだけ多くのチップセットとOSの組み合わせをサポートする必要があります。FaceMe®は10以上のOSをサポートしており、市場で最も多くのチップセットをサポートする顔認証エンジンの1つです。
FaceMe®は非常に多用途での使用が可能で、プラットフォームに合わせ柔軟なカスタマイズオプションを適用できるように設計されています。ユーザー固有のニーズにあわせて、ハードウェアやチップセット、OS、機能を組み合わせてシステムを設計することができます。FaceMe®のマルチOSサポートは、クロスプラットフォームでのソリューション開発に最適です。開発者は、OpenVINO、NVIDIA CUDA/TensorRT、Intel Movidius、NVIDIA Jetson、Qualcomm SNPE、MediaTek NeuroPilotなどのGPUアクセラレーションを利用してディープラーニングアルゴリズムを高速化し、パフォーマンスをさらに最適化できます。
高性能ワークステーションやGPU(またはVPU)を備えたPCで動作するプラットフォームにおいては、システムバスを介してCPU、GPU、メモリ間で多数のビデオストリームが同時に処理されているため、優れたパフォーマンスの顔認証システムを設計することは決して簡単ではありません。システムアーキテクチャレベルで適切な実装がなされていない場合、非常に優れた顔認証アルゴリズムであっても動作は低下する場合があります。そのため、システムアーキテクチャの設計では、CPU、GPU、およびメモリ間のデータフローを最小限に抑える必要があります。
FaceMe®は最高のパフォーマンスを提供するために、システムアーキテクチャの最適化を重ねてきました。例えば、1台のワークステーションでは、NVIDIA RTX A6000を使用してFaceMe®は1秒あたり256~416フレームを処理できます(使用しているFaceMe®顔認証モデルによって異なります)。これは、ワークステーションごとに25~41のビデオチャンネル(毎秒10フレーム)を同時に処理できることを意味しており、コストパフォーマンスは卓越しています。
コストに制約がある場合や、スマートドアロックなどいくつかの用途では、基本的に正面から顔をとらえた場合の認証があれば十分です。コストがかかるそれ以上の高度な機能は必要ないというユーザーも多いことでしょう。このような市場では、低コストのデバイスで顔認証を実現できるような軽量AIモデルへの需要があります。FaceMe®では、こういった目的のために3つのモデルを提供しています。
FaceMe®が提供する顔認証ソリューションの重要な特徴の1つは、さまざまなタイプのハードウェアに実装が可能な柔軟性です。FaceMe®は、ワークステーション、コンピューター、モバイル、IoTデバイスなどほぼ全ての環境タイプに展開する事ができます。
それでは、いくつかの例を見てみましょう。
大規模な施設において、数十または数百のビデオチャンネルに対して顔認証を展開しようとしている組織では、複数のIPカメラのビデオフィードを同時に処理可能なハイエンドGPU搭載ワークステーションの恩恵を受けることができます。デパート、空港、工場施設、病院などの施設には、セキュリティ監視やアクセス制御、訪問者の行動分析、群衆管理、VIP顧客の識別まで、様々な目的に使用可能な数十台または数百台のカメラがあります。これらはすべて、顔認証によって有効化、最適化できる一例です。すべてのカメラを顔認証用の1台または複数台の中央ワークステーションに接続することで、最も簡単かつ堅牢で経済的なソリューションとなります。
ワークステーション上でのFaceMe®のメリットについて、詳細はVIVOTEKとのパートナーシップ、および顔認証ソリューションへの統合例をご覧ください。
PCは、一般的に小規模なオペレーションや、単一の用途に利用されます。VIP顧客の特定、従業員の出退勤管理、ブラックリストに載っている人物のアラートを受け取るといった店舗やレストラン向けのスマートリテール用途に適しています。また新型コロナウイルスのような感染症対策に対応するため、店舗に入るすべての人(従業員と顧客)のマスク着用状態や体表面温度を検出する機能も追加できます。管理者は店舗やレストランの正面玄関と通用口にIPカメラまたはUSBカメラを設置し、統合パッケージ型顔認証ソフトウェアを実行するPCにインストールするだけでこれらの機能を利用できます。
FaceMe® Securityは、これらすべての機能を備えた、手ごろな価格で迅速に導入できるソフトウェアソリューションパッケージとなっています。
モバイルデバイスでの顔認証技術の可能性は、端末のロックを解除するだけではありません。フィンテックに関する使用例の一つとして、を携帯電話に実装して、オンラインバンキング、ローン申請、保険などでの本人確認のセキュリティを強化することができます。
エッジコンピューティングの急速な進化はパフォーマンスの向上とコストの削減をもたらし、顔認証を活用したIoTデバイスの無限の可能性を開いてくれました。スマートキオスクはその最たる例の1つです。旅慣れた人には、入国審査時の顔パスゲートなどでおなじみでしょう。現在、顔認証を統合したスマートキオスクがファーストフード、レストラン、病院、ホテルなどに設置されています。例えば待ち時間の短縮などの目的で、セルフチェックインキオスクを導入している大規模なホテルチェーンも急速に増えています。FaceMe®のような顔認証エンジンを追加すると、登録したゲストの顔をホテル滞在中に必要な唯一のIDとして使用し、フロントでの受付に限らず、客室のキー解除や売店でのキャッシュレスなど、より便利でパーソナライズされた顧客体験を実現できます。
すでにご説明したように、エッジベースの顔認証は、クラウドベースの顔認証よりもはるかに安全です。クラウドを使用した顔認証は、個人の写真やビデオをインターネット経由でクラウドコンピューティングサーバーに送信する必要があり、本質的に攻撃や漏洩に対して脆弱です。対してエッジベースの顔認証では、キャプチャ及び保存されるデータは暗号化された顔テンプレートの形をとっており、顔認証のプロセス全体をクラウドやネットワーク接続なしで実行できるため、このようなリスクの殆どを回避する事ができます。
FaceMe®では、すべてのデータはAES 256bit暗号化で保護された状態でデータベース上に記録されます。AESは最高の対称暗号化アルゴリズムの1つであり、256bitは現在最高のセキュリティレベルです。個別の秘密鍵で暗号化されたデータをプラットフォームサーバーや外部に保存することにより、ハッキングによる危険に晒されたり、データが流出したりした場合でも、顔認証用の顔テンプレートは完全に保護されます。
ただし、顔写真の登録が必要な顔認証プログラムを使用する際には、使用用途を明確に提示するなど、法律・規則に定められたルールに則る必要があることに注意をしなければなりません。
エッジベースのソリューションでは、キャプチャされた顔情報は、将来の照合と識別の目的で顔認証テンプレートデータに保存されます。このテンプレートには実際の顔写真は含まれていません。また、テンプレートは人物の顔を再構成するために使用することはできず、個人の識別に繋がる可能性のある個人情報とは別に保持されます。顔認証を実行するためにキャプチャされ暗号化されたデータは、安全なデータベースに保存されている登録済みテンプレートとの一致を確認する場合にのみ使用できます。世界各国・地域のデータプライバシー法・個人情報保護法および規制(GDPR、CCPA、BIPA、LGPD等)では、生体認証データは個人情報として扱われるため、これらの法律や規制がかかる場所での顔認証の採用を検討している企業は、ユーザーの同意を得る必要があります。
法律や規制の内容に加えて注意が必要なのは、顔認証システムを導入する際、そのシステムを提供している企業の、本社と主要施設がある場所です。アメリカ政府は、中国とロシアに拠点を置く企業の監視技術について、適切な条件提示またはデータ保護の要件を満たしていない可能性があるとして、公正性に懸念を表明しています。ご承知のように、中国とロシアは政治システム等も西側諸国とは異なり、特殊な例と考えても良いでしょう。基本的にはほとんどの顔認証ソリューションは安全であり、データとプライバシーの保護基準を厳格に適用していると考えられます。顔認証を利用するエンドユーザーとしては、特にセキュリティ、プライバシー、人権の保護に関して、万が一の問題が起きないよう、顔認証システムを提供している企業が安心してサービスを利用できる企業かどうか、確認をしておきましょう。
顔認証と生体認証技術は、責任をもって開発及び展開された場合、日常生活の多くの場面を劇的に改善できる可能性があります。しかし、安全性、セキュリティ、顧客体験を向上させる可能性が高い一方で、使い方を誤ってしまうと、特にプライバシーや個人情報保護の観点から、問題が起こる可能性もあります。
現在、アメリカ連邦政府による規制はありませんが、一部の州では顔に関する規制の法的手続きが始まっています。イリノイ州は顔認証に取り組んだ最初の州であり、2008年に、民間企業が顔データを含む生体データを収集及び使用する方法に関する厳格な規制を規定する生体情報プライバシー法(BIPA)を可決しました。ほぼ10年後の2020年に、カリフォルニア消費者プライバシー法(CCPA)が施行され、企業が収集したデータ(生体認証データを含む)を開示請求するための権利が住民に付与され、削除を要求する権利が留保されました。またワシントン州でも、法律が2021年に施行され、法執行機関などの政府機関がテクノロジーの使用について完全な透明性を要求しています。
さらに、2021年4月、EUが人工知能(AI)の利用に関する規制案を公表し、日本でも「重要インフラや顔認証などでの使用を対象に事実上の事前審査制を導入するなど広範な制限を敷く」(出典:日本経済新聞2021年4月21日「EUがAIに包括規制案 世界で初、顔認証利用に事前審査も」)などと報じられ、注目を集めました。
また、日本においては個人情報保護法において、顔認証データを含む個人情報の使用用途に関して規定が設けられており、個人情報に該当する顔認証データに関しては、個人情報保護法に定められたルールに則った取得、利用、保管などが必要となります。
これらのことを念頭に置いて、私たちサイバーリンクは倫理的に十分な配慮を行ったうえで、決められたルールに沿って顔認証のテクノロジーを社会に役立てるべきだと考えております。私たちは、この技術が完全に排除されるのではなく、個人のプライバシーや個人情報の保護と共存しながら社会の安全性と利便性をより向上させるために活用され、役割を果たすことを望んでいます。そして、そうした形で、世界の立法府が関連する法律を策定することを望んでいます。このテクノロジーがどのように機能するか、どのように使用されるべきか、そしてどのように個人のプライバシーを保護していくか、オープンで透明な議論が交わされる必要があると考えています。
こうした議論が続く一方で、顔認証の展開が社会の安全性向上に貢献し、同時にポジティブなユーザー体験を生み出すという多くの成功例も生まれています。Security Industry Association(SIA)が実施した最新の調査によると、アメリカ人の大多数は顔認証が社会の様々な場所をより安全にできると考えており、特に空港では68%(航空会社は75%、TSAは69%)、オフィスビルでは70%、銀行では68%にのぼっています。ここに例を示し、それぞれの重要な考慮事項をハイライトしていきます。
顔認証の主な用途は、以下の5つに分類されます。
これらに分類される用途で、実際に顔認証が活用されている例を場所ごとにご紹介します。
産業施設、工場、倉庫では、従業員と訪問者の厳密なアクセスコントロールと監視、および機械設備を操作するための認証などが必要になることが多く、顔認証はそのようなタスクを管理するためのソリューションとして活用されています。さらに、感染症対策としてマスク着用が推奨されていたことに伴い、フロアスタッフが確実にマスクを着用しているかどうかをチェックする用途でも顔認証が力を発揮しました。
入国管理などのインタラクティブキオスクや、より自動化された航空機への搭乗、セキュリティモニタリングといった形で、空港や駅などの公共施設ではすでに多くの顔認証が導入されています。
また、新型コロナウイルス感染症の流行時には、人々で混雑することの多いこれらの大規模施設で、いかに感染対策を行うのか、大きな課題がありました。顔認証はこうした課題の解決にも役立っており、非接触チェックインとヘルスチェック機能により、マスクの着用状態や体温を監視し、発熱者など感染リスクのある人物が飛行機、電車、バスに乗ることを防ぎます。
スマートオフィス、スマートホームなどスマートシティ化は急速に広がっており、これらでは共通してアクセス制御、安全衛生の監視などが求められています。学校や病院も同様です。これらの施設のセキュリティを維持するためには、現状、多くの場合は人間の介入を必要とするため費用がかかります。顔認証を使用することで、多くのアクセス制御および監視タスクをシームレスに自動化でき、コストを抑えて安全性を高めることができます。
顔認証技術は、小売業の現場にも活躍の場を広げ、顧客に新しい魅力的な体験を提供する立役者となっています。商業施設で、顔認証で取得したカメラの前にいる人物の属性情報をもとにデジタルサイネージの表示を、その人にあったものに変更したり、店舗でVIP顧客を識別したり、また訪問者の年齢や性別、表情、行動分析に関する匿名データを収集し、マーケティング施策に役立てることも可能です。
なりすましを防止するためのeKYC(electronic Know Your Customer)を使用した顧客認証は、現在金融部門で最も注目されているテクノロジーの1つです。顔認証は、ATMでのユーザー認証、ローンや保険支払いを申請する人の身元確認、オンラインバンキング取引の保護など、オンラインとオフラインの両方でeKYCに最適なソリューションを提供します。また、eKYCだけではかく、物理的な安全の観点でも顔認証は役立っています。例えば従業員を威嚇するなど、過去の行動からブラックリストに載っている人が存在する場合、その人が立ち入る前にセキュリティ担当者に警告することで、銀行の建物などに関して、セキュリティを大幅に強化することもできます。
ホテル運営者にとって、顔認証は効率的でパーソナライズされた体験を顧客に提供できるという大きな利点があります。例えば、VIP顧客がホテルに到着すると、フロントデスクのスタッフに自動的に通知し、顔認証により、ゲストエリアへのアクセスを許可、さらにエレベーターのフロアを選択して、部屋のドアのロックを解除…こんなことも可能になります。こうした活用方法は、顧客体験の向上だけではなく、サービスの質を落とすことなく人手不足を解消することにもつながります。
また、ファーストフード業界では、セルフオーダーキオスク、デジタルサイネージ、自動化されたドライブインなどのテクノロジーに既に多額の投資を行っています。通常、店舗でクーポンなどのサービスを利用する場合、顧客はスマートフォンでアプリを立ち上げ、パスワードの入力など複数の面倒な手順を踏まなければなりません。顔認証を追加すると、これらの手順を大幅に効率化し、顧客に素早くサービスを提供することができるようになります。
顔認証技術は、あらゆる人々、場所を快適にして、私たちの世界をよりよくすることが可能です。
顔認証の持つ可能性は想像を超えています。例えば、オフィスのアクセスコントロールを自動化することで、従業員の安全を保つことができます。小売業者は、店舗でより強力な顧客体験を提供できます。製造業では、多くの制限区域へのアクセスコントロールを簡素化できます。銀行やフィンテック企業では、はるかに強力な認証と最先端のセキュリティコントロールを導入しています。これらはまだ氷山の一角にすぎません。
顔認証はAI生体認証技術の未来です。もちろん、前述したように、その活用においては、プライバシーや、個人情報保護に配慮し、人々が安心してこのテクノロジーを利用できるように、決められたルールに則って導入していく必要があります。ただし、技術の進歩、イノベーションを妨げず、あらゆる人々がテクノロジーの恩恵を受けられるよう、適切な規制と、透明性ある議論が必要です。
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