近年、ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)などの仮想通貨が普及しつつあります。アメリカでは、アメリカ人の少なくとも16%が既に仮想通貨などの暗号資産を保有しているといわれています。
従来の通貨や証券と比較して投資収益率が高くなる可能性があることから、世界的な投資ブームの引き金となっています。一方で、取引上のリスクも少なからず存在し、不正行為や資金洗浄が横行になる可能性もあります。このため、世界中で仮想通貨取引への規制や管理を開始しています。
本人確認の最も一般的な形式のひとつは、Know Your Customer (通称:KYC) です。KYCは、金融機関が顧客の身元を確認することで不正行為を回避することに役立ちます。現在、ほとんどの主要な暗号通貨取引所には、プラットフォームで違法行為が発生した場合に責任を負わないようにするための KYC プロセスがあります。KYCには既存の弱点がありますが、人工知能 (AI) のサポートで簡単に改善できます。
この記事では、仮想通貨など暗号資産取引におけるeKYCの概要および仮想通貨取引所で顔認証による本人確認をすることで、法規制を遵守しながらユーザー体験を向上させる方法についてご案内します。
暗号資産とは、交換媒体として機能するよう設計されたデジタル通貨および仮想通貨のことです。一般的にはブロックチェーン技術を使用しており、個々の仮想通貨は、分散型台帳技術(DLT)によって、すべてのブロックチェーンユーザーのコンピューターに分散され、同期して保存されます。この仕組みによって、データの改ざんに強いという特徴があります。
USドルやユーロ、そして円などなじみ深い法定通貨とは異なり、仮想通貨は政府や中央銀行が発行する通貨ではありません。仮想通貨は、コンピューターで生成された暗号を介してブロックチェーンに情報を格納する分散型通貨です。法定通貨は、各国政府からの要求に応じて発行されます。そして、通貨市場と各国の法律および規制によって、その価値と為替レートが決まります。
一方で、仮想通貨の発行量は限られています。例としてビットコインの場合、2009年の使用開始以来1700万ビットコインが「マイニング」されていますが、新しいビットコインがマイニングされるのに伴い、2140年に総発行量が上限の2100万に達するよう、発行速度が低下し続けるようになっています。仮想通貨の価値は、需要と供給により決まります。
対米ドルでみると、1ビットコインの価値は2021年に劇的な伸びを見せており、年初の2万ドルから、2021年11月初旬には6万8000ドルを超えるまでになりました。この極端な価格変動に触発され、多くの人が仮想通貨による暗号資産市場への投資を行うようになりました。
仮想通貨の取引はおもに、取引所サービス・取引プラットフォーム・店頭取引(OTC)の3つの方法で行われています。
KYCは金融分野の専門用語である「Know Your Customer」の略で、一般的に「本人認証」を意味します。これは、個人情報・資格等の証明書、およびその他の本人確認が可能な資料を使用して、本人確認を行う認証方法です。資金洗浄やなりすましによる詐欺、その他の金融犯罪を防止するために、国際金融分野においてKYCは不可欠な存在であり、規制上必要な行程となっています。
eKYCは「Electronic Know Your Customer」の略で、電子的な本人認証を意味します。複雑な手続きや事務処理を必要とする従来のKYCプロセスと比較して、すべての手続きをオンラインで電子的に完了することができます。eKYCは、インターネット経由でのモバイルバンキング、モバイル決済サービス、オンラインでの保険証券の取得や銀行口座のリモート開設などで使用されており、いわゆるフィンテックと呼ばれる革新を支えるキーテクノロジーとなっています。
より具体的な例として、銀行口座をリモートで開設する際のeKYCプロセスをみていきましょう。申請者は、AI画像認証を使用して身分証明書の正当性を証明し、自分の顔と身分証明書の顔写真を照合することができます。また、AI顔認証によってサービスにログインし、スムーズに金融サービスを使用することもできます。
eKYCとは? オンライン上で完結する本人確認については、こちらの記事もご覧ください。
すべての主要な暗号通貨プラットフォームには、詐欺から保護するための身元確認プロセスが含まれています。これには、複数の身分証明書のアップロードや個人情報の確認が含まれる場合があります。 顔認識による eKYC は、迅速な身元確認を提供することで、このプロセスを簡素化します。
2021年7月に台湾の金融監督管理委員会(FSC)は、仮想通貨プラットフォームでのマネーロンダリング防止とテロ資金調達防止のための規制を実施しました。本人認証の際には、顧客の名前、パスポートなどの公的な身分証明書の番号、生年月日、国籍、住所などの情報が必要となります。仮想通貨プラットフォームでの取引には、既に本人認証が必須となっています。
顔認証の導入事例としては、BitoEXが本人認証の実装後に発生した問題を解決するために、AI顔認証システムの開発者であるサイバーリンクと協力することになりました。サイバーリンクは、FaceMe® eKYC & Fintechソリューションを導入することによって、AI技術を使用してユーザーの申請プロセスを加速するとともに、審査担当者による本人認証中のミスや審査期間の長期化といったリスクを回避することに成功しました。このソリューションには、次の機能が含まれています。
FaceMe®のAI顔認証技術により、BitoEXは認証プロセス全体を完全に自動化することに成功し、審査担当者が行うのは最終確認のみとなりました。申請にあたって他に補足情報を必要としない場合、FaceMe®によって認証プロセスに要する期間を10日から最短24時間にまで短縮することができます。さらには、ユーザーは顔認証を使用して、パスワードを使用することなくサービスにログインしたり取引を行ったりすることができるため、取引サービス全体の効率も大きく改善することができます。
サイバーリンクは、AI・顔認証・ビデオ会議サービスに使用されている技術を統合し、保険・金融業界向けに設計されたワンストップeKYCソリューションであるFaceMe® eKYC & Fintechを開発しました。このソリューションでは、顔認証・生体検出・身分証明書類の認証・個人の顔と身分証明書の顔写真の比較・文書情報の検証など、保険や口座の開設をリモートで行うために必要なeKYC SDKが提供されています。
FaceMe® eKYC & Fintechは、保険・金融業界においてプライベート、またはGCPのパブリッククラウドサービスを使用したリモートビデオ会議サービスの構築を支援するためのビデオ会議SDKも提供しています。iOSおよびAndroid用のSDKも用意されているため、モバイル向けのアプリケーションサービスに融合することも可能です。保険申請の行程を記録することで、FSC規制に準拠するための監査やコンプライアンス検証に役立てることができます。
顔認証によるeKYC本人認証と不正防止の強化については、こちらの記事もご覧ください。また、FaceMe® eKYC & FintechのWebページでは、保険・金融業界用のeKYCソリューションについてより詳しくご紹介しています。