eKYC本人認証による仮想通貨取引でのユーザー体験の向上
FaceMe®
< All Articles

eKYC本人認証による仮想通貨取引でのユーザー体験の向上

2022/01/26

近年、ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)などの仮想通貨が普及しつつあります。米国では、アメリカ人の少なくとも16%が既に仮想通貨などの暗号資産を保有しているといわれています。また、台湾でもさまざまな仮想通貨取引所がオンプレミスホスティングを利用し始めており、人気を集めています。

仮想通貨は24時間年中無休で取引することができ、価格が大きく変動します。従来の通貨や証券と比較して投資収益率が高くなる可能性があることから、世界的な投資ブームの引き金となっています。一方で、取引上のリスクも少なからず存在し、不正行為やマネーロンダリングの温床となる可能性もあります。このため、さまざまな国が仮想通貨取引に関する活動の監督と規制を開始しています。

たとえば、台湾の金融監督管理委員会(FSC)は、マネーロンダリングを防止するため、2021年7月に仮想通貨プラットフォームでのマネーロンダリング防止とテロ資金調達防止のための規制を施行しました。この規制によって、仮想通貨を含むすべての取引への本人認証を実装すること、取引に関する記録を保管すること、疑わしい取引を検出した際に申告を行うことなどが仮想通貨取引所の運営者に求められるようになりました。

この記事では、仮想通貨など暗号資産取引におけるeKYCの概要と、仮想通貨取引所で顔認証による本人認証を使用することで、法規制を遵守しながらユーザー体験を向上させる方法についてご案内します。

暗号資産・仮想通貨とは

暗号資産とは、交換媒体として機能するよう設計されたデジタル通貨および仮想通貨のことです。一般的にはブロックチェーン技術を使用しており、個々の仮想通貨は、分散型台帳技術(DLT)によって、すべてのブロックチェーンユーザーのコンピューターに分散され、同期して保存されます。この仕組みによって、データの改ざんに強いという特徴があります。

法定通貨と仮想通貨の違い

私たちによりなじみ深い法定通貨(USドル、ユーロ、円など)とは異なり、仮想通貨は政府や中央銀行が発行する通貨ではありません。仮想通貨は、コンピューターで生成された暗号を介してブロックチェーンに情報を格納する分散型通貨です。法定通貨は、各国政府からの要求に応じて発行されます。そして、通貨市場と各国の法律および規制によって、その価値と為替レートが決まります。

一方で、仮想通貨の発行量は限られています。例としてビットコインの場合、2009年の使用開始以来1700万ビットコインが「マイニング」されていますが、新しいビットコインがマイニングされるのに伴い、2140年に総発行量が上限の2100万に達するよう、発行速度が低下し続けるようになっています。仮想通貨の価値は、需要と供給により決まります。

通貨の種類
法定通貨
仮想通貨
発行方法
各国政府・中央銀行の要求
コンピューターおよび暗号による生成
管理方法
中央集権的 政府による管理
分散型(非中央集権的)政府や特定の機関によらない管理
発行量
無制限 必要に応じて各国政府により発行
制限あり 通貨毎に特定の有限数量
価値
通貨市場、取引、法規制によって決定
需要と供給によって決定
保管方法
個々の使用者、または機関(国・銀行など)による保管
ブロックチェーン

対米ドルでみると、1ビットコインの価値は2021年に劇的な伸びを見せており、年初の2万ドルから、2021年11月初旬には6万8000ドルを超えるまでになりました。この極端な価格変動に触発され、多くのユーザーが仮想通貨による暗号資産市場への投資を行うようになりました。

ビットコイン

仮想通貨の取引

例として台湾では、仮想通貨の取引は主に取引所サービス、取引プラットフォーム、および店頭取引(OTC)の3つの方法で行われています。

  • 取引所サービス

    取引所サービスでは、法定通貨と仮想通貨の為替レートに基づいて通貨を交換することができます。ユーザーは、台湾ドルを送金することによってプラットフォーム上で仮想通貨と直接交換し、交換された通貨をウォレットに保存します。現在台湾では、MaiCoinとBitoEXの2つの仮想通貨取引所が存在します。MaiCoinではビットコイン(BTC)、イーサリアム(ETH)、ライトコイン(LTC)を取り扱っており、BitoEXではビットコインとイーサリアムのみを取り扱っています。

    BitoEXから仮想通貨を購入するには、台湾ドルをユーザーのアカウントに送金するか、またはコンビニに設置されたサービス端末を使用します。MaiCoinでは、ATMを使用してビットコインを購入する方法も用意されています。

    取引所サービスでの取引では非リアルタイムの為替レートを使用するため、現在の市場価格とのギャップが発生する場合があります。一方で、取引において売買のマッチングを必要としないため、すぐに取引を行うことができるという利点があり、取引の方法は比較的シンプルです。しかし、取引に使用できる通貨が少ないことや、仮想通貨を使用して別の暗号資産を購入できないといった短所もあります。

  • 取引プラットフォーム

    取引所サービスは多くの場合、個人や企業が仮想通貨を取引するための取引プラットフォームを提供しています。ユーザーはメンバーとして登録した後、取引を開始する前に個人認証を行い、審査を受ける必要があります。

    これらのサービスの利点の1つは、取引に柔軟性があることです。ユーザーは法定通貨を使用して仮想通貨を購入および売却することができるとともに、さまざまな仮想通貨を相互に交換することができます。さらに、リアルタイムに変動するレートを使用するため、価格は実際の市場価格に近くなります。短所としては、場合によっては取引に時間がかかることがあります。ユーザーは、売買のマッチングが成立した場合にのみ法定通貨を購入または売却することができます。

  • 店頭取引

    店頭取引では、仮想通貨など暗号資産をユーザー間、または店頭取引サービスをサポートする取引所を介した個人間取引を行うことができます。

暗号資産の取引において本人確認が必要となる理由

KYCおよびeKYCとは

KYCは金融分野の専門用語である「Know Your Customer」の略語で、一般的に「本人認証」を意味します。これは、個人情報、証明書、およびその他の資料を使用して、本人確認を行う認証方法です。

KYCは口座の開設や取引など、さまざまな金融サービスですでに広く使用されています。キャッシュフローを管理し、またマネーロンダリング、詐欺、その他の金融犯罪を防止するために、国際金融分野においてKYCは不可欠となっています。

eKYCは「Electronic Know Your Customer」の略語で、電子的な本人認証を意味します。複雑な手続きや事務処理を必要とする従来のKYCプロセスと比較して、すべての手続きをオンラインで電子的に完了することができます。eKYCは、インターネット経由でのモバイルバンキング、モバイル決済サービス、オンラインでの保険証券の取得や銀行口座のリモート開設などで使用されており、いわゆるフィンテックと呼ばれる革新を支えるキーテクノロジーとなっています。

より具体的な例として、銀行口座をリモートで開設する際のeKYCプロセスをみていきましょう。申請者は、AI画像認証を使用して身分証明書の正当性を証明し、自分の顔と身分証明書の顔写真を照合することができます。また、AI顔認証によってサービスにログインし、スムーズに金融サービスを使用することもできます。

顔認証によるeKYC本人認証と不正防止の強化については、こちらの記事もご覧ください。

暗号資産の取引においてKYC/eKYCが要求される理由

台湾の金融監督管理委員会(FSC)は、2021年7月に仮想通貨プラットフォームでのマネーロンダリング防止とテロ資金調達防止のための規制を実施しました。これにより暗号資産のオペレーターは、新規ビジネスの開始(アカウントの開設・登録)、30,000台湾ドル以上の取引、マネーロンダリングまたはテロに繋がる疑いのある取引、および顧客情報の信憑性または適合性に関して嫌疑が生じる場合などに、顧客の本人認証を行う必要があります。本人認証の際には、顧客の名前、パスポートなどの公的な身分証明書の番号、生年月日、国籍、住所などの情報が必要となります。仮想通貨プラットフォームでの取引には、既に本人認証が必須となっています。

台湾の主要な仮想通貨プラットフォームと取引所は、これらの規制に対応するためのシステムを導入しています。たとえばBitoProでは、ユーザーは2021年6月30日までにレベルB認証を完了する必要があり、以前に認証を完了したレベルAおよびBのユーザーは、取引を続行する前に情報を更新する必要があります。またMaicoin GroupのMaicoinプラットフォームとMAX取引サービスでは、レベル1のユーザーは本人認証を完了する必要があります。またレベル2のユーザーは、身分証明書の画像をアップロードする必要があります。

eKYC技術による暗号資産取引でのユーザー体験の向上

ケーススタディとしてBitoEXでの事例をみていきましょう。2014年に設立されたBitoEXは、仮想通貨取引プラットフォームを提供する台湾企業で、世界の業界信頼度ランキングでトップ50にランクインする仮想通貨取引プラットフォームの1つです。ユーザーは、プラットフォーム上で仮想通貨など暗号資産を購入、保存、取引することができます。BitoEXは、BitoEX仮想通貨プラットフォームと、BitoPro仮想通貨取引サービスを提供しています。

現地の法律および規制に準拠するために、仮想通貨取引に導入された本人認証

FSCの規制に準拠するために、BitoEXは2021年6月に本人認証システムを導入しました。ユーザーは身分証明書の表面と裏面の画像をアップロードし、さらに身分証明書を持った状態で自撮りを行い、レベルBの認証を完了する必要があります。

従来の本人確認の課題

従来の本人確認プロセスは完了までに平均10営業日を要するうえ、次の3つの大きな課題を抱えていました。

  1. 身分証明書を持って自撮りを行うプロセスの複雑さ
    このプロセスでは、ユーザーはアカウント登録日と取引所の名前を紙に書き留め、文書に署名し、紙と身分証明書を持った状態で自撮りを行い、最後に撮影した写真をアップロードする必要があります。この手順は非常に複雑で、多くのユーザーにとって登録を行う上での障壁となっています。

  2. 身分証明書の情報の手動入力
    本人認証を完了するために、ユーザーは名前、身分証明書番号、写真を撮影した日付、登録住所などの情報を入力する必要があります。手動での入力は時間がかかるだけでなく、誤入力が発生してしまう可能性もあります。さらに、審査担当者はこれらの情報を肉眼で1つ1つ確認しなければならないという課題もあります。

  3. 取引所の審査担当者による肉眼での情報確認
    取引所の審査担当者は、身分証明書の正当性を注意深く確認しなければなりません。自撮り写真内の情報が正しいかどうか、偽造の疑いがないかどうかなど、情報を視覚的に比較して申請者のものであるかどうかを確認する必要があります。

eKYC技術による仮想通貨取引でのユーザー体験の向上

BitoEXは、本人認証の実装後に発生した問題を解決するために、AI顔認証の開発者であるサイバーリンクと協力することになりました。サイバーリンクは、FaceMe® eKYC & Fintechソリューションを導入することによって、AI技術を使用してユーザーの申請プロセスを加速するとともに、審査担当者による本人認証中のミスや審査期間の長期化といったリスクを回避することに成功しました。このソリューションには、次の機能が含まれています。

  1. 身分証明書の認証
    申請プロセス中に、ユーザーはスマートフォンのカメラを使用して身分証明書の表面と裏面をスキャンすることで、本人認証を行うことができます。FaceMe® eKYC & FintechのAI認証は、身分証明書を認証する際にレーザー刻印なども識別することができます。

  2. 生体検出・なりすまし防止
    AI技術を使用して、身分証明書の写真とカメラの前の申請者が同じ人物であるかどうかを比較することができます。このプロセスは、審査担当者の目に依存せず、申請者をすばやく認証するために役立ちます。

  3. 身分証明書と人物の比較
    AI技術を使用して、身分証明書の写真とカメラの前の申請者が同じ人物であるかどうかを比較することができます。このプロセスは、審査担当者の目に依存せず、申請者をすばやく認証するために役立ちます。

  4. OCRによる情報の自動入力
    本人認証が完了した後、OCR技術を使用して、名前、身分証明書番号、写真の撮影日時、身分証明書に記載された住所などの情報を取得することができます。FaceMe®はこれらの情報を自動的に申請書に入力するため、ユーザーが手動で入力する手間を省くことができます。

FaceMe®のAI顔認証技術により、BitoEXは認証プロセス全体を完全に自動化することに成功し、審査担当者が行うのは最終確認のみとなりました。申請にあたって他に補足情報を必要としない場合、FaceMe®によって認証プロセスに要する期間を10日から最短1日にまで短縮することができます。さらに、ユーザーは顔認証を使用して、パスワードを使用することなくサービスにログインしたり取引を行ったりすることができるため、取引サービス全体の効率も大きく改善することができます。

FaceMe® eKYC & Fintech – 仮想通貨取引やその他の金融サービスに最適なeKYCソリューション

サイバーリンクは、AI、顔認証、およびビデオ会議サービスに使用されている技術を統合し、保険・金融業界向けに設計されたワンストップeKYCソリューションであるFaceMe® eKYC & Fintechを開発しました。このソリューションでは、顔認証、生体検出、身分証明書の認証、個人の顔と身分証明書の顔写真の比較、文書情報の検証など、保険や口座の開設をリモートで行うために必要なeKYC SDKが提供されています。

FaceMe® eKYC & Fintechは、保険・金融業界においてプライベート、またはGCPのパブリッククラウドサービスを使用したリモートビデオ会議サービスの構築を支援するためのビデオ会議SDKも提供しています。iOSおよびAndroid用のSDKも用意されているため、モバイルアプリサービスに統合することも可能です。保険申請プロセスを記録することで、FSC規制に準拠するための監査やコンプライアンス検証に役立てることができます。

FaceMe® Fintech - sdk

顔認証によるeKYC本人認証と不正防止の強化については、こちらの記事もご覧ください。また、FaceMe® eKYC & FintechのWebページでは、保険・金融業界用のeKYCソリューションについてより詳しくご紹介しています。

FaceMe®: サイバーリンクの顔認証トータルソリューション

FaceMe について
のお問い合わせ

お問い合わせはこちら