顔認証テクノロジー活用ガイド【2024年 最新版】
FaceMe®
< 全ての記事

顔認証テクノロジー活用ガイド【2024年 最新版】

2024/10/16

近年、顔認証の需要はますます高まり、さまざまな場所に活用が広がっています。スマートフォンのロック解除や決済等の場面で、顔認証を行ったことがある方も多いことでしょう。

しかしながら、顔認証の可能性はスマートフォンでの使用にとどまりません。既に様々な業界で、安全性やセキュリティの向上、作業の効率化などの用途で活用され、多くのメリットをもたらしています。

顔認証のテクノロジーをより効果的に活用するためには、顔認証について、深く知ることが必要です。本稿では、顔認証の仕組み、設置や最適化の手法、技術的に考慮するべき仕様や実際の使用用途、将来的な可能性などについて、解説します。

1. 顔認証とは

顔認証とは、データベースに登録された顔の情報と、カメラが検知した顔の画像や映像を照らし合わせて本人確認をするもので、顔の特徴点を抽出して個人を認証する生体認証のひとつです。生体認証には、顔のほか、虹彩、指紋、静脈、音声などを利用するものもあります。

顔認証システムは、近年急速な発展を遂げるAIの技術であるディープラーニング(深層学習)の進化によってその精度をあげており、現在さまざまな分野で活用が進んでいます。

1.1 顔認証の主な機能

顔認証は、高度なAI生体認証技術を用いています。顔検出や顔認証だけではなく、顔の情報を用いて様々な目的で活用する事が可能となっています。

顔認証エンジンの主な機能:

顔検出

顔検出は顔認証で行う最初のステップです。このステップでは、画像全体をスキャンして、人間の顔の全部または一部が含まれているかを確認します。高速で正確な顔検出は、顔認証プロセス全体のパフォーマンスを確保するために重要なステップです。FaceMe®では、一度に複数の顔を検出し、存在する顔の数をカウントし、それぞれの顔を個別に検出することができます。

顔の特徴点抽出

特徴点抽出は、顔検出に続くステップです。顔認証エンジンは、顔画像からn次元のベクトルセット(テンプレート)を抽出します。高い精度を実現するためには、非常に高い”n”値のベクトルセットが必要です。個人の顔から抽出されたテンプレートは、照合または検索をするために使用されます。

顔認証

新規に抽出されたテンプレートは、事前にデータベース登録されたテンプレートと照合されます。1:N検索では、個人のテンプレートをデータベース全体と照合し、一致するテンプレートを見つけて個人を特定します。FaceMe®のテンプレートは特徴点情報のみを暗号化した状態で保存します。また、プラットフォームを通じた実際の顔画像データを保存する必要が無い為、個人情報である取得した顔情報を保存することなく、認証機能を用いることが可能です。

1.2 追加機能

こうした顔の検出、認証などの他にも、機能を追加することで、次のようなことも実現できるようになります。

顔属性検出

顔属性検出は、年齢、性別、表情、頭の向きや動き(頷き、頭を振る)といった特性を識別して分析する機能です。この機能によって、顧客に合わせてカスタマイズされた広告やメッセージを提供したり、詳細な訪問者統計を収集したりすることができるようになります。そのため、スマートリテールやデジタルサイネージを用いたマーケティングなどに多く活用され、欠かせない機能となっています。

女性の顔で年齢、感情を推定

マスク検出

新型コロナウイルスの感染が落ち着いた後も、日本では変わらずマスクを着用する人が多数派となっていて、医療機関など、引き続きマスク着用が推奨されている場所もあります。こうした状況下において、マスク検出は、非常に重要性の高い機能の1つです。FaceMe®はマスク着用時に最適化された顔認証を提供しており、例えばマスク着用が必要な場所で、マスクをしているかどうかを見分ける「マスク検出」が可能です。また、鼻と口がマスクで適切に覆われているかどうか(正しく装着できているか)を確認すると同時に、マスクを着用したままで高精度の本人確認を行う事ができます。

女性が顔認証をしている。マスク有無と体温を表示 1 2
1マスク着用時も本人認証可能
2マスクの検出

なりすまし防止

なりすまし防止テクノロジーは、他人の写真やビデオをカメラの前に置くなど、悪意のあるなりすまし攻撃を検出して保護するためのものです。2Dおよび3Dカメラを使用して正確に生体検出を行い、なりすましによる誤った認証を防ぐことができます。

2Dカメラ(通常のUSB Webカメラなど)を使用する場合、なりすまし攻撃はインタラクティブな手法と非インタラクティブな手法で検出されます。インタラクティブな手法では、顔や頭の動きを指示する事により自然な反応を検出して、実際の人間かどうか判断します。非インタラクティブな手法では、顔認証ソリューションプロバイダーが独自の顔認証AIアルゴリズムで判断します。

3Dカメラを使用する場合は深度を検出し、非常に短時間でなりすまし防止による生体検出を可能にします。この場合インタラクティブな検出・認識手法は必要ありません。しかし、3Dカメラはより優れた機能を持つ一方でコストがかかります。FaceMe®は2Dカメラを使用する場合でも、わずかなコストで正確ななりすまし防止を提供することができます。また、様々な2D/3Dカメラをサポートしており、Intel RealSense、iPhone/iPad(Face IDカメラ)、Orbbec、Himax、Altek、eYs3Dなどの各種3Dカメラと互換性があります。

写真、動画によるなりすまし防止

1.3 精度

顔認証アルゴリズムのパフォーマンスを評価する政府機関としては、アメリカ国立標準技術研究所(NIST)が有名です。NISTの顔認証ベンチマークテスト(FRVT)は、VISA、VISA Border、Mugshot、WILDという4つのテストでアルゴリズムのパフォーマンスを評価します。

VISAでは、パスポート写真に基づいて個人を識別する機能をテストします。VISA Borderでは、VISA画像をWebカメラ画像と比較します。Mugshotでは、顔正面の画像のみですが、12年以上おいて撮影された2枚の同じ人物の画像を一致させます。WILDでは、ランダムで様々な角度から撮影された画像を使用します。

FaceMeは160万人分のデータベースを使用したVISA Border (証明写真画像と正面カメラ画像の比較)という条件での本人認証率の結果99.83%という数値を使用しており、2023年9月9日のテスト結果において世界10位、中国とロシアのベンダーを除外すると6位を獲得しています。

アルゴリズムだけではなく、カメラの解像度、位置、照明、レンズの汚れ、またカメラの種類といった要素も精度に影響します。顔認証エンジンは通常、720pのカメラから動作しますが、一般的な用途には1080pの解像度が推奨されています。一部の低品質なカメラでは、角度のついた顔の映像を正確に読み取る事ができないため、適切な照明で被写体が真正面を向いている映像を使用する必要があります。そしてもちろん、カメラのレンズは常にクリアでなければなりません。

2. 顔認証の実装方法について

顔認証は、クラウドベースの外部APIソリューションを使用する方法と、SDKのライブラリを使用してエッジデバイス内に統合実装する方法があります。それぞれのアプローチには異なる利点がありますが、エッジベースの顔認証は速度、セキュリティ、価格、柔軟性、および汎用性の面において非常に優れています。

2.1 クラウドベースの顔認証

インターネットを経由してクラウドサービスプラットフォーム上で顔認証を行う場合、大量のネットワーク帯域幅が必要となるため、データ転送にコストがかかり、従量課金で高価となる懸念があります。

また、この方法だと、顔認証に使用するデータ(完全な顔写真)はインターネット経由で送信されるため、脆弱なシステムを経由する事でハッキングや情報漏洩、他者にデータを保存される可能があり、セキュリティリスクが伴います。このようにインターネット経由でのデータ送信が必要となるクラウドシステムではセキュリティ的に閉じたシステムを構築する事ができません。

一方で、クラウドに展開する場合は大規模なハードウェアを必要としないという利点もあります。ビジネスが既に完全にオンラインで運営されている場合、クラウドベースの顔認証は導入しやすく、選択肢として最適ともいえます。

2.2 エッジベースの顔認証

エッジベースでの顔認証とは、ローカルデバイス側に顔認証テクノロジーが組み込まれているものを指しています。スマートロック、モバイルデバイス、POSシステム、インタラクティブキオスク、デジタルサイネージなどがこれにあたります。エッジデバイスは、クラウド処理や大きなファイルの送信による遅延なしに、正確な顔認証を即座に実行できます。実際に外部の顔データベースにアクセスするようなケースを除いて、ネットワーク又はクラウドに接続する必要はありません。またそのようなネットワーク上の外部データベースへのアクセスが必要な場合においても、エッジデバイスから暗号化された小さなサイズのテンプレートを送信して、データベース上のテンプレートと比較を行う為、数ミリ秒以内で安全な顔認証処理を可能にします。

新規に顔認証ソリューションを立ち上げる場合、これらのIoTデバイス等を使用したエッジベース顔認証アプローチは比較的導入しやすい手法といえるでしょう。金融関連業界などの高いセキュリティレベルが要求されるソリューションの場合は、インターネットやネットワーク接続を許可する事が出来ないため、エッジベースでの顔認証システムが非常に適しています。

コスト、柔軟性、拡張性に優れたエッジベースの顔認証は、多くのエンドユーザーにとって最適な選択肢であるといえるでしょう。

顔認証のデモ

FaceMe® SDKは、市場の幅広いハードウェアやOSをサポートしており、高精度なAIエンジンは、NISTの顔認証ベンダーテスト(FRVT)で最高ランクのエンジンの1つに位置付けられています。テクノロジーの絶え間ない進歩により、幅広い業界に展開するための最高の精度とセキュリティ基準を満たしています。FaceMe®は、セキュリティ、アクセスコントロール、公共サービス、スマートバンキング、スマートリテール、スマートシティ、ホームセキュリティなど様々な場面で活用することができます。

2.3 エッジデバイス上で顔認証システムを運用するメリット

(エッジデバイスでの顔認証テクノロジーについて、(1)コスト、(2)速度、(3)安定性 についてご案内します。

2.3.1 コスト

エッジとクラウドのどちらを選択するかはシステム設計上の重要な決定事項となります。通常の場合、高精度なAI処理には高いパフォーマンスが必要となり、クラウドコンピューティングは決して安価ではありません。クラウドは通常、認識された顔の数やトラフィックで料金が請求されるため、エッジデバイスは、多くの場合、クラウドよりもコスト面で有利となります(1時間あたり数名の数を認識するような、非常に小規模な利用の場合はクラウドベースの方が安価となる可能性があります)。近年、AIチップの価格は下がり続けているため、エッジベースのソリューションは将来的にもコスト上の利点が続く可能性が高く、持続的な利用を実現できる可能性が高まります。

2.3.2 速度

速度に関しては、現在最高性能の顔認証アルゴリズムはミリ秒単位で顔認証を処理します。エッジベースのソリューションは速度面では最高ランクで、クラウドベースのソリューションを数桁上回っています。企業が顔認証の実装をどのように検討しているかにかかわらず、処理速度は重要な指標になります。多様化する顔認証用途において、即時性でクラウドはエッジに太刀打ちする事は難しいでしょう。

例えばブラックリストに登録された個人を特定する場合、特定に時間がかかり少しの遅れが生じるだけで、取り返しのつかない被害が発生する可能性があります。認証に要する時間が長引けば長引くほど、大きなリスクを抱える懸念が生じてしまいます。

2.3.3 安定性

インターネットサービスに依存しないことは、通信の切断や低帯域といったネットワーク障害の影響を受けないことを意味します。例えば、クラウドベースの顔認証ソリューションを使用していて、ネットワーク障害で自宅のドアロックが機能しなくなった場合を想像してみてください。エッジベースの顔認証には、そのようなネットワーク上の問題に起因する脆弱性はありません。

その優位性と大きなイノベーションにより、エッジベースのAIテクノロジーは、今後の顔認証の発展に向け重要な推進力となるでしょう。この記事の残りの部分では、エッジベースの顔認証に焦点を当ててご案内します。

3. 顔認証をエッジデバイスで運用する際の検討事項

顔認証エッジデバイスを構築する場合、最も重要なポイントとなるのが、適切なチップセットやハードウェアを選択することです。コストやパフォーマンス、用途や目的に基づいてプラットフォームを決定する必要があります。例えば、ハイエンドのNVIDIA GPUは非常に高価ですが、多数のビデオチャンネルを同時に処理する事が可能なため、大規模な施設を監視するケースなどでは、最も大きなコスト要因であるワークステーションの台数を減らすことができます。一方、MediaTekやBroadcomなどの低コストなIoT/モバイルデバイス向けSoCチップは、1秒あたり約5フレーム程度の処理、正面の顔認証の用途のみ使用可能という限られたパフォーマンスですが、ドアアクセスなどの用途には十分な能力を持っており、広く手ごろな価格で利用できます。

このように、どのような場所でこのような使い方をするかによって、それぞれにあったものを選択する必要があります。

3.1 チップセット

顔認証の最適化に最も重要なのは、AIチップもしくはAI処理を行うSystem-on-Chip(SoC)です。Intel、NVIDIA、MediaTek、NXP、Qualcommなどのメーカーから豊富なチップセットオプションが提供されており、それぞれが用途に応じて独自の利点を持っています。各チップセットは、様々な計算能力、フォームファクター、消費電力に向けて設計されており、独自のAI推論エンジンアクセラレターを備えている場合があります。

NVIDIA、Intel、Qualcomm、MediaTek、NXPなどの主要なチップセットメーカーは、AI on EdgeとIoTの需要の高まりに対応して、APU(AI Processing Units)、VPU(Vision Processing Units)、NPU(Neural Processing Units)などの新しいハードウェアを急速に市場に登場させています。これらはすべて、パフォーマンスと消費電力を最適化しながら、画像処理とAI推論を高速化する事ができます。

以下の表は、FaceMe®を含む多くの顔認証エンジンと統合されたSoC、GPU、VPU製品の一覧です。これらはほんの一部ですが、幅広いオプションがあることがわかります。

3.1.1 スタンドアロンGPU/VPU

これらのチップは、ハイエンドなハードウェア機器とより高度なAI処理に最適化されて設計されています。これらのチップを使用して顔認証システムを構築する場合は、別途CPUが必要です。

ベンダー & タイプ
製品&モデル
特徴
NVIDIA GPU
T4
NVIDIA T4は、分散コンピューティング環境に最適なユニバーサルディープラーニングアクセラレーターです。
NVIDIA TuringTM Tensor Coresを搭載したT4は、深層学習、機械学習のトレーニング、推論、ビデオトランスコーディング、仮想デスクトップを高速化など、様々な分野でのパフォーマンスを提供します。NVIDIA AIプラットフォームの一部として、T4はすべてのAIフレームワークとネットワークタイプをサポートし、大規模処理の実装を最大化する劇的なパフォーマンスと効率性を提供します。

デバイス: ワークステーション
パフォーマンス: 非常に高い
コスト: 非常に高い
NVIDIA GPU
A40 RTX A6000
NVIDIA A40およびRTX A6000は、どちらも単精度浮動小数点(FP32)演算の倍速処理と電力効率の改善を提供し、グラフィックスのパフォーマンスを大幅に向上させます。これらは、大量の顔認証要求を処理できるワークステーション、またはオンプレミスサーバー向けに設計されています。

デバイス: ワークステーション
パフォーマンス: 非常に高い
コスト: 非常に高い
NVIDIA GPU
Quadro RTX 5000
レイトレーシング用の全く新しいRTCore、AI用の384 Tensorコア、並列コンピューティング用の3072 CUDAコアを備えたNVIDIA Turingは、FP32パフォーマンスと11.2TFLOPSの能力を備えた世界で最も先進的なGPUの1つです。Quadro 4000/5000シリーズは、ワークステーション上で少数~中規模のカメラからの顔認証要求を処理できるように設計されています。

デバイス: ワークステーション
パフォーマンス: 非常に高い
コスト: 非常に高い

3.1.2 GPU/NPU/APU内蔵CPU/SoC

これらのチップは、ハイエンドなハードウェア機器とより高度なAI処理に最適化されて設計されています。これらのチップを使用して顔認証システムを構築する場合は、別途CPUが必要です。

ベンダー & タイプ
製品&モデル
特徴
NVIDIA SoC + GPU
Jetson Orin Nano
Jetson Orin™ Nanoは、電力効率に優れた小型のフォームファクターで従来のエントリーレベル向けエッジ AI の常識を覆す性能を発揮します。前世代のNVIDIA® Jetson Nano™ と比較して最大80倍のパフォーマンス向上を実現した強力なデバイスです。

デバイス: AIoTデバイス
パフォーマンス: 高い
コスト: 低~中
NVIDIA SoC + GPU
Jetson Orin NX
NVIDIA® Jetson Orin™ NX は、小型フォームファクターのロボットやその他の自律動作マシンで比類なき性能と効率を実現します。従来のNVIDIA Jetson AGX Xavier の 3 倍、NVIDIA® Jetson Xavier™ NX の 5 倍のパフォーマンスを実現します。

デバイス: AIoTデバイス
パフォーマンス: 非常に高い
コスト:
NVIDIA SoC + GPU
Jetson AGX Xavier
AGX Xavierは、NVIDIAが提供する最もハイエンドのAI/IoTプラットフォームです。VoltaアーキテクチャとTSMC 12nmプロセスにより、最高のパフォーマンスを提供します。コンパクトかつ低消費電力で、幅広い機能をサポートし、開発者によるソフトウェア実装が可能な柔軟性を備えています。Jetsonは、ほぼすべてのAIアルゴリズムに適しており、エッジベースのシステムに最適です。

デバイス: AIoTデバイス
パフォーマンス: 非常に高い
コスト: 高い
Intel CPU
Atom x6000E
第11世代プロセッサーはIntel® Time Coordinated Computing(Intel® TCCテクノロジー)とタイムセンシティブ・ネットワーキング(TSN)テクノロジーにより、産業用、小売、銀行、ヘルスケア、スマートシティといった様々な需要に対してリアルタイムコンピューティングが可能となる十分なパフォーマンスを提供します。新たなIntel DL BoostテクノロジーとVNNI命令セットを使用する事により、VNNIを統合した顔認証アルゴリズムは、CPU使用時の2倍もの高速化を実現できます。

デバイス: AIoTデバイス
パフォーマンス: 用途により最適
コスト: 低~中
Intel CPU
Celeron
Celeronは産業用PCで幅広く使用されており、もっとも小型なAtomと強力なCoreシリーズの中間となる素晴らしいバランスを提供します。Celeronでの顔認証パフォーマンスは、Atomで実行するよりもはるかに応答性が高くなります。

デバイス: AIoTデバイス、PC
パフォーマンス:
コスト:
Intel CPU
Core i3
Intel Core i3は、コンシューマーPC向けIntel CoreラインナップのエントリーレベルのCPUですが、産業用PCにおいては、顔認証アルゴリズムだけではなく、様々なタスクを処理するのに十分な性能を備えています。Core CPUには、H.264/AVCおよびH.265/HEVCコーデックの複数のビデオストリームを同時に処理できるGPU(Intel HD Graphics)も搭載されています。Core i3では、1080pビデオを使用して毎秒約30フレームの顔認証タスクを処理できます。つまり、3つのビデオソースに対して、それぞれ10フレーム/秒で同時に顔認証を実行できる能力があります。また、WindowsとUbuntu OSの両方と互換性があるため、様々なタスクやニーズをサポートするためのソフトウェアアプリケーションライブラリを簡単に展開できます。

デバイス: AIoTデバイス、PC
パフォーマンス: 中~高
コスト: 中~高
MediaTek SoC + APU
i350
i350は、顔、オブジェクト、ジェスチャー、モーション認識などの視覚認識を必要とするメインストリームAIoTデバイス向けに設計されたエッジ AIプラットフォームであり、効率的な14nmプロセスを使用して構築されています。専用のAPU(AIプロセッサ)を組み込んでおり。ビジョンエッジAIを実現し、一般的なアプリケーションでパフォーマンスと電力効率を大幅に向上させます。低消費電力を維持しながら、アクセス制御またはホームセキュリティデバイスなどに使用できます。MediaTech i350で、FaceMe®は1秒あたり8~18の顔認証を処理できます。

デバイス: AIoTデバイス
パフォーマンス:
コスト:
NXP SoC + NPU
i.MX8M Plus
i.MX 8M Plusファミリーは、機械学習とコンピュータービジョン、高度なマルチメディア、信頼性の高い産業用IoTに重点を置いています。NXPはPlusモデルからSoCに強力なNPUを追加しており、AIアルゴリズムのパフォーマンスを大幅に向上しています。スマートホーム・ビルディング・シティ、インダストリー4.0アプリケーションのニーズを満たすように構築されています。

デバイス: AIoTデバイス
パフォーマンス:
コスト:
Qualcomm SoC + GPU
QCS610
QCS410
QCS603
APQ8053
Qualcomm AI Engineによる機械学習は、低消費電力で多くのAIネットワークとIoT用途をサポートできます。これにより、次世代のスマートカメラやスマートエンタープライズ、スマートホーム、オートモティブのIoTアプリケーション向けに高性能で電力効率の高いエッジコンピューティングを提供することを目的としています。
顔認証アルゴリズムやその他のAIアプリケーションは、Qualcom® Neural Processing SDKを使用して簡単に最適化でき、パフォーマンスを大幅に向上させることができます。

デバイス: AIoTデバイス
パフォーマンス:
コスト: 低~中
Broadcom SoC + GPU
BCM2711
Raspberry Pi 4 Model Bで使用されているBroadcomのチップで、約3~5fpsの顔認証をサポートしています。非常に手ごろな価格で、積極認証向け顔認証と組み合わせたシンプルな用途のアプリケーションに適しています。

デバイス: AIoTデバイス
パフォーマンス: 用途により最適
コスト: 低~中
Rockchip SoC + GPU
RK3399 Pro
Rockchipは、ワンストップソリューションとして使用可能な、初の高性能AIプロセッサーRK3399Proをリリースしました。

デバイス: AIoTデバイス
パフォーマンス:
コスト: 低~中
Google
SoC + GPU + TPU
Coral Edge TPU (SOM)
Coral SoMはNXPのiMX8M SoCで、eMMCメモリ、LPDDR4 RAM、Wi-Fi、Bluetooth、およびMLアクセラレーション用のEdge TPUコプロセッサーを含む統合Linuxシステムです。Mendelと呼ばれるDebian LinuxベースのOSを実行します。オンボードのEdge TPUコプロセッサーは、1秒あたり4兆回の処理(Tera Operations per Second=TOPS)を、TOPSあたり0.5W(2TOPS/W)で実行します。

デバイス: AIoTデバイス
パフォーマンス: 中~高
コスト:

3.2 オペレーティングシステム(OS)

それぞれのチップセットは、特定のオペレーティングシステム(OS)で動作するように設計されていることがあります。優れた汎用性の高い顔認証エンジンは、できるだけ多くのチップセットとOSの組み合わせをサポートする必要があります。FaceMe®は10以上のOSをサポートしており、市場で最も多くのチップセットをサポートする顔認証エンジンの1つです。

  • Windows
  • Android
  • iOS
  • Linux variants
    • Ubuntu x64,
    • Ubuntu ARM,
    • RedHat,
    • JetPack (主に NVIDIA Jetson ファミリー用),
    • CentOS,
    • Yocto ARM

FaceMe®は非常に多用途での使用が可能で、プラットフォームに合わせ柔軟なカスタマイズオプションを適用できるように設計されています。ユーザー固有のニーズにあわせて、ハードウェアやチップセット、OS、機能を組み合わせてシステムを設計することができます。FaceMe®のマルチOSサポートは、クロスプラットフォームでのソリューション開発に最適です。開発者は、OpenVINO、NVIDIA CUDA/TensorRT、NVIDIA Jetson、Qualcomm SNPE、MediaTek NeuroPilotなどのGPUアクセラレーションを利用してディープラーニングアルゴリズムを高速化し、パフォーマンスをさらに最適化できます。

3.3 システムアーキテクチャの最適化

高性能ワークステーションやGPU(またはNPU)を備えたPCで動作するプラットフォームにおいては、システムバスを介してCPU、GPU、メモリ間で多数のビデオストリームが同時に処理されているため、優れたパフォーマンスの顔認証システムを設計することは決して簡単ではありません。システムアーキテクチャレベルで適切な実装がなされていない場合、非常に優れた顔認証アルゴリズムであっても動作は低下する場合があります。そのため、システムアーキテクチャの設計では、CPU、GPU、およびメモリ間のデータフローを最小限に抑える必要があります。

FaceMe®は最高のパフォーマンスを提供するために、システムアーキテクチャの最適化を重ねてきました。例えば、1台のワークステーションでは、NVIDIA RTX A6000を使用してFaceMe®は1秒あたり256~416フレームを処理できます(使用しているFaceMe®顔認証モデルによって異なります)。これは、ワークステーションごとに25~41のビデオチャンネル(毎秒10フレーム)を同時に処理できることを意味しており、コストパフォーマンスは卓越しています。

顔認証のデモ

3.4 顔認証用の軽量AIモデル

コストに制約がある場合や、スマートドアロックなどいくつかの用途では、基本的に正面から顔をとらえた場合の認証があれば十分です。コストがかかるそれ以上の高度な機能は必要ないというユーザーも多いことでしょう。このような市場では、低コストのデバイスで顔認証を実現できるような軽量AIモデルへの需要があります。FaceMe®では、こういった目的のために2つのモデルを提供しています。

  • Ultra High (UH) モデル:VISA(積極認証)とWILD(非積極認証)の両方の顔タイプを、市場トップクラスの精度で認識できます。ただし、GPUまたはハイエンドのIntel CPUのような非常に高いマシンパワーを必要とします。
  • Very High (VH) モデル:VISA(積極認証)とWILD(非積極認証)の両方の顔タイプを、UHモデルよりわずかに低い程度の精度で認証できますが、必要な計算能力は大幅に低下しており、精度と経済性のバランスが要求される様々な用途に適しています。

4. エッジベースの顔認証:オンプレミスデバイスとワークステーション

FaceMe®が提供する顔認証ソリューションの重要な特徴の1つは、さまざまなタイプのハードウェアに実装が可能な柔軟性です。FaceMe®は、ワークステーション、コンピューター、モバイル、IoTデバイスなどほぼ全ての環境タイプに展開する事ができます。

それでは、いくつかの例を見てみましょう。

ワークステーションでの顔認証

大規模な施設において、数十または数百のビデオチャンネルに対して顔認証を展開しようとしている組織では、複数のIPカメラのビデオフィードを同時に処理可能なハイエンドGPU搭載ワークステーションの恩恵を受けることができます。デパート、空港、工場施設、病院などの施設には、セキュリティ監視やアクセス制御、訪問者の行動分析、群衆管理、VIP顧客の識別まで、様々な目的に使用可能な数十台または数百台のカメラがあります。これらはすべて、顔認証によって有効化、最適化できる一例です。すべてのカメラを顔認証用の1台または複数台の中央ワークステーションに接続することで、最も簡単かつ堅牢で経済的なソリューションとなります。

ワークステーション上でのFaceMe®のメリットについて、詳細はVIVOTEKとのパートナーシップ、および顔認証ソリューションへの統合例をご覧ください。

セキュリティールームでモニターを監視する男女

PCでの顔認証

PCは、一般的に小規模なオペレーションや、単一の用途に利用されます。VIP顧客の特定、従業員の出退勤管理、ブラックリストに載っている人物のアラートを受け取るといった店舗やレストラン向けのスマートリテール用途に適しています。また新型コロナウイルスのような感染症対策に対応するため、店舗に入るすべての人(従業員と顧客)のマスク着用状態や体表面温度を検出する機能も追加できます。管理者は店舗やレストランの正面玄関と通用口にIPカメラまたはUSBカメラを設置し、統合パッケージ型顔認証ソフトウェアを実行するPCにインストールするだけでこれらの機能を利用できます。

FaceMe® Securityは、これらすべての機能を備えた、手ごろな価格で迅速に導入できるソフトウェアソリューションパッケージとなっています。

ショッピングモールで顔認識

モバイルデバイスでの顔認証

モバイルデバイスでの顔認証技術の可能性は、端末のロックを解除するだけではありません。フィンテックに関する使用例の一つとして、顔認証をスマホのアプリに実装して、オンラインバンキング、ローン申請、保険などでの本人確認のセキュリティを強化することができます。

スマートフォンでオンラインバンキング

IoTデバイスでの顔認証

エッジコンピューティングの急速な進化はパフォーマンスの向上とコストの削減をもたらし、顔認証を活用したIoTデバイスの無限の可能性を開いてくれました。スマートキオスクはその最たる例の1つです。旅慣れた人には、入国審査時の顔パスゲートなどでおなじみでしょう。現在、顔認証を統合したスマートキオスクがファーストフード、レストラン、病院、ホテルなどに設置されています。例えば待ち時間の短縮などの目的で、セルフチェックインキオスクを導入している大規模なホテルチェーンも急速に増えています。FaceMe®のような顔認証エンジンを追加すると、登録したゲストの顔をホテル滞在中に必要な唯一のIDとして使用し、フロントでの受付に限らず、客室のキー解除や売店でのキャッシュレスなど、より便利でパーソナライズされた顧客体験を実現できます。

空港のキオスク端末で顔認証

5. その他の設計要素:セキュリティ、暗号化&プライバシー

すでにご説明したように、エッジベースの顔認証は、クラウドベースの顔認証よりもはるかに安全です。クラウドを使用した顔認証は、個人の写真やビデオをインターネット経由でクラウドコンピューティングサーバーに送信する必要があり、本質的に攻撃や漏洩に対して脆弱です。対してエッジベースの顔認証では、キャプチャ及び保存されるデータは暗号化された顔テンプレートの形をとっており、顔認証のプロセス全体をクラウドやネットワーク接続なしで実行できるため、このようなリスクの殆どを回避する事ができます。

FaceMe®では、すべてのデータはAES 256bit暗号化で保護された状態でデータベース上に記録されます。AESは最高の対称暗号化アルゴリズムの1つであり、256bitは現在最高のセキュリティレベルです。個別の秘密鍵で暗号化されたデータをプラットフォームサーバーや外部に保存することにより、ハッキングによる危険に晒されたり、データが流出したりした場合でも、顔認証用の顔テンプレートは完全に保護されます。

ただし、顔写真の登録が必要な顔認証プログラムを使用する際には、使用用途を明確に提示するなど、法律・規則に定められたルールに則る必要があることに注意をしなければなりません。

6. 顔認証技術と個人情報

顔認証と生体認証技術は、責任をもって開発及び展開された場合、日常生活の多くの場面を劇的に改善できる可能性があります。しかし、安全性、セキュリティ、顧客体験を向上させる可能性が高い一方で、使い方を誤ってしまうと、特にプライバシーや個人情報保護の観点から、問題が起こる可能性もあります。

日本においては個人情報保護法において、顔認証データを含む個人情報の使用用途に関して規定が設けられており、個人情報に該当する顔認証データに関しては、個人情報保護法に定められたルールに則った取得、利用、保管などが必要となります。

これらのことを念頭に置いて、私たちサイバーリンクは倫理的に十分な配慮を行ったうえで、決められたルールに沿って顔認証のテクノロジーを社会に役立てるべきだと考えております。私たちは、この技術が完全に排除されるのではなく、個人のプライバシーや個人情報の保護と共存しながら社会の安全性と利便性をより向上させるために活用され、役割を果たすことを望んでいます。そして、そうした形で、世界の立法府が関連する法律を策定することを望んでいます。このテクノロジーがどのように機能するか、どのように使用されるべきか、そしてどのように個人のプライバシーを保護していくか、オープンで透明な議論が交わされる必要があると考えています。

関連記事)顔認証と個人情報の保護 ~顔認証の活用に必要な基礎知識、必要な対応について解説

7. 顔認証技術の導入事例

最後に顔認証の活用シナリオ例をご紹介します。

  1. アクセスコントロール(例:入退室管理、スマートロック)
  2. セキュリティ監視(例:施設監視、外部人物の侵入検出)
  3. 本人認証(例:金融機関でのeKYCなど高レベルな本人確認)
  4. スマートリテール(例:訪問者の属性分析)

産業施設、工場、倉庫

産業施設、工場、倉庫では、従業員と訪問者の厳密なアクセスコントロールと監視、および機械設備を操作するための認証などが必要になることが多く、顔認証はそのようなタスクを管理するためのソリューションとして活用されています。

産業施設、工場、倉庫では、従業員と訪問者の厳密なアクセスコントロールと監視。

公共交通機関

入国管理などのインタラクティブキオスクや、より自動化された航空機への搭乗、セキュリティモニタリングといった形で、空港や駅などの公共施設ではすでに多くの顔認証が導入されています。

顔認証は、入国管理などのインタラクティブキオスクから、より自動化された航空機への搭乗、

スマートオフィス、スマートホーム、医療施設、教育機関、介護施設

スマートオフィス、スマートホームなどスマートシティ化は急速に広がっており、これらでは共通してアクセス制御、安全衛生の監視などが求められています。学校や病院も同様です。これらの施設のセキュリティを維持するためには、現状、多くの場合は人間の介入を必要とするため費用がかかります。顔認証を使用することで、多くのアクセス制御および監視タスクをシームレスに自動化でき、コストを抑えて安全性を高めることができます。

スマートオフィス、スマートホーム、医療施設、教育機関、介護施設。

店舗、商業施設、イベント会場

顔認証技術は、小売業の現場にも活躍の場を広げ、顧客に新しい魅力的な体験を提供する立役者となっています。商業施設で、顔認証で取得したカメラの前にいる人物の属性情報をもとにデジタルサイネージの表示を、その人にあったものに変更したり、店舗でVIP顧客を識別したり、また訪問者の年齢や性別、表情、行動分析に関する匿名データを収集し、マーケティング施策に役立てることも可能です。

顔認証技術により、小売業を変革し、新しい魅力的な顧客体験を実現するための独自のスマートリテールソリューションを提供します。

金融機関、保険機関

なりすましを防止するためのeKYC(electronic Know Your Customer)を使用した顧客認証は、現在金融部門で最も注目されているテクノロジーの1つです。顔認証は、ATMでのユーザー認証、ローンや保険支払いを申請する人の身元確認、オンラインバンキング取引の保護など、オンラインとオフラインの両方でeKYCに最適なソリューションを提供します。また、eKYCだけではかく、物理的な安全の観点でも顔認証は役立っています。例えば従業員を威嚇するなど、過去の行動からブラックリストに載っている人が存在する場合、その人が立ち入る前にセキュリティ担当者に警告することで、銀行の建物などに関して、セキュリティを大幅に強化することもできます。

なりすましを防止するためのeKYC(electronic Know Your Customer)を使用した顧客認証は、現在金融部門で最も注目されているテクノロジーの1つです。

サービス業:レストラン、バー、ホテル

ホテル運営者にとって、顔認証は効率的でパーソナライズされた体験を顧客に提供できるという大きな利点があります。例えば、VIP顧客がホテルに到着すると、フロントデスクのスタッフに自動的に通知し、顔認証により、ゲストエリアへのアクセスを許可、さらにエレベーターのフロアを選択して、部屋のドアのロックを解除…こんなことも可能になります。こうした活用方法は、顧客体験の向上だけではなく、サービスの質を落とすことなく人手不足を解消することにもつながります。

また、ファーストフード業界では、セルフオーダーキオスク、デジタルサイネージ、自動化されたドライブインなどのテクノロジーに既に多額の投資を行っています。通常、店舗でクーポンなどのサービスを利用する場合、顧客はスマートフォンでアプリを立ち上げ、パスワードの入力など複数の面倒な手順を踏まなければなりません。顔認証を追加すると、これらの手順を大幅に効率化し、顧客に素早くサービスを提供することができるようになります。

サービス業:レストラン、バー、ホテル

最も革新的なAI生体認証技術である顔認証、その未来への展望

顔認証技術は、あらゆる人々、場所を快適にして、私たちの世界をよりよくすることが可能です。

顔認証の持つ可能性は想像を超えています。例えば、オフィスのアクセスコントロールを自動化することで、従業員の安全を保つことができます。小売業者は、店舗でより強力な顧客体験を提供できます。製造業では、多くの制限区域へのアクセスコントロールを簡素化できます。銀行やフィンテック企業では、はるかに強力な認証と最先端のセキュリティコントロールを導入しています。これらはまだ氷山の一角にすぎません。

顔認証はAI生体認証技術の未来です。もちろん、前述したように、その活用においては、プライバシーや、個人情報保護に配慮し、人々が安心してこのテクノロジーを利用できるように、決められたルールに則って導入していく必要があります。ただし、技術の進歩、イノベーションを妨げず、あらゆる人々がテクノロジーの恩恵を受けられるよう、適切な規制と、透明性ある議論が必要です。

関連記事)

顔認証システムを使った6つの活用事例 この記事では様々な産業・分野における顔認証技術の用途と、実装において考慮すべき事項について紹介します。

FaceMe®: サイバーリンクの顔認証トータルソリューション

FaceMe について
のお問い合わせ

FaceMe に関するお問い合わせ