米国だけでも30万を超える工場や倉庫があり、毎年の設備投資は3600億ドルを超えています。そして、施設のセキュリティに掛かる出費は毎年400億ドルにのぼります。それらのセキュリティシステムは前時代的なものが多く、それぞれが統合されていないため、保守点検に多くの人的リソースが必要で、運用に伴う障害などの発生件数も少なくありません。
昨今の感染症状況において、世界中の企業、特に製造工場や倉庫などの社会インフラの維持に欠かせない企業は、いかにして従業員の安全を確保するかを再考する必要に迫られています。企業は、感染症対策に関するガイドラインに従うだけではなく、よりリスクの低い方法で感染症を防止できるようビジネスモデルを適合させていく必要があります。しかし、従業員が頻繁に接触して密な状態で作業せざるを得ない多忙な環境では、これは決して容易なことではありません。
エッジベースの顔認証などの新しいテクノロジーにより、施設のセキュリティ、衛生、安全性を大幅に向上させ、従業員をより安全に保護するとともに、管理コストを削減することができます。この記事では、これをどのように実現するかを、いくつかの具体例を通してご説明します。
顔認証は、工場施設など現場のセキュリティを一新させるうえで極めて重要な役割を果たすテクノロジーです。FaceMe® SDKのような顔認証ソリューションを既存のセキュリティカメラシステムに追加する事によって、施設内や周辺の人々の存在を検出することができます。また、それらをネットワーク上のデータベースに接続することで、従業員、登録された訪問者や請負業者などを明確に識別し、ブラックリスト登録された人物や、データベース登録のない人物などをブロックできます。これらはログとして記録されるだけではなく、リアルタイムで関係者にアラートメッセージを送信できるため、迅速な対応を取ることが可能です。このようなソリューションにより、監視に関わる処理を自動化できるため、セキュリティスタッフはこれまでのように複数のカメラ映像を目視で監視する必要がなくなる代わりに、アラートを受け取ることで迅速に行動できるようになります。また、SDKを既存のシステムに実装することが困難な場合は、ソフトウェアパッケージソリューションであるFaceMe® Securityをワークステーションにインストールして、既存もしくは新たに用意したIPカメラに接続するだけで、同様のソリューションをすぐに導入する事が可能です。施設セキュリティに顔認証を追加することで、全体的な人的コストを削減しつつ、資産と施設をより安全に保護することができるようになります。
運用状況をモニターし、複雑なワークフローをスムーズに実行できるよう改善することは、工場および倉庫の現場において最も優先される事項の1つです。顔認証によっていくつかのプロセス、特に従業員の入退室と、人の動きをモニターする必要のあるプロセスを合理化することができます。例えば出入口にカメラを配置することで入退室管理を自動化でき、設備および装置に顔認証を導入することで、許可された従業員のみが操作を行えるようにできます。これらはログとして記録されるだけではなく、健康と安全上の理由から作業の上限時間を設定しているような場合において、従業員が設定時間を超えた際にアラートを送信することができます。制限区域においては、従業員が危険な物質や温度に長時間晒される場合や、許可されていない人物が検出された場合などにもアラートを送信することもできます。また、請負業者、訪問者、配達業者などの施設への立ち入りや滞在を追跡するためにも利用する事が可能です。これらは、FaceMe® のような柔軟な顔認証ソリューションにより、人間による監視への依存度を減らしながら、スムーズな運用とコスト低減を実現できる例のほんの一部です。
残念な事に2021年においても、感染症が私たちに大きな影響を与え続けることが想定されます。そして、企業は将来発生しうる同様な状況にも備える必要があります。調査によると、マスクの着用はウイルスの拡散を防ぐ最も効果的な手段の1つとされており、従業員や接触した人を安全に確保する為に必要不可欠です。ただし、マスクは適切に着用した場合にのみ、着用者や周辺の人を安全に守ることが可能で、マスクを一時的にずらして会話したり、正しく着用していない場合は効果を十分に発揮することができません。
FaceMe® のような顔認証ソリューションは、従業員がマスクを着用しているかどうか、そして着用状態が適切かを瞬時に識別できます。従業員がマスクをせずに施設に入ろうとした場合は、マスクを適切に着用するまで入場を阻止するか、担当者に通知することができます。また、従業員がマスクを外したり、正しく着用していない場合にも、これらをリアルタイムで検出して適切な対応を取ることができます。
感染症状況におけるもう一つの重要なポイントは、検温スクリーニングです。ウイルスの拡散を抑える方法として、公共およびプライベートな空間で、体温を測定して健康状態をチェックすることはごく当たり前のこととして受け入れられつつあります。
既に一部の倉庫では、従業員が職場に入る際に検温を実施していますが、この作業を手動で行うには少なくない時間と労力が必要です。FaceMe® のような最新の顔認証技術は検温機能と連動する事により、このプロセスを効率的に非接触で行うことが可能です。FaceMe® は、従業員が自身や他人に対する健康上のリスクを抱えているかどうかを、本人と上司に通知することもできます。
このようなテクノロジーを倉庫の入り口などに設置することにより、管理者は従業員に対して健康上の問題がない事を確認して職務にあたることを許可でき、フロアにいる他の従業員への感染リスクを低減することが可能となります。
通常、工場と倉庫の従業員は、1日を通していくつもの認証を物理的な接触を伴う方法で行っています。出退勤管理、ドアのロック解除、共有コンピューターへのアクセス、機器の使用など、これらはすべて接触を伴うセンサー、カード、または鍵などを使用しているため、従業員は常に接触による感染のリスクに晒されています。これらのケースにおいて非接触での認証を可能とする顔認証技術は以前より存在しますが、それらのほとんどはマスク着用時の顔認証には対応できていません。FaceMe® などの最先端の顔認証技術は、マスク着用時でも高精度の顔認証を行えるため、感染症を予防しながら安全な非接触での認証を実現することができます。
これまでに紹介してきたテクノロジーは、まだ改善の余地を残していますが、世界中の工場や倉庫で先行プロジェクトが始まっており、実証実験から本格的展開の段階へと移行しつつあります。適切なエッジベースでのAIハードウェアが存在しない、導入コストが高いといった数年前の問題は、現在、強力で低価格なオプションが提供されていることにより急速に解消へと向かっています。また、エッジベースのデバイスに顔認証を実装した場合でも、ほとんどの用途ではネットワーク上のデータベースへの接続が必要となります。今後5Gが普及していくことで、現場施設での顔認証だけでなく、モバイル機器や遠隔作業での活動などにも顔認証の活用の幅が拡がっていくでしょう。
Bテクノロジーにより優れた体験がもたらされる一方で、工場や倉庫の管理者は、特に顔認証のようなテクノロジーに関しては、従業員とのコミュニケーションを通じてプロセスとワークフローの変化を確実に伝える必要があります。これが不十分な場合、運用上、および社会的に重大な課題をもたらす可能性があります。しかしながら、テクノロジーを適切に運用することで、昨今の困難な状況を乗り越えた後も、サプライチェーンの効率化や、労働環境における安全性の強化といった多くの利点を享受することができるでしょう。
顔認識の概要、その仕組み、および導入方法については、エッジデバイスによる顔認証をご覧ください.