出退勤時間を記録し、従業員の労働状況を把握することができる、勤怠管理システム。集計などの手間を省き、超過勤務がないかなどをリアルタイムでチェックできる一方で、不正打刻やなりすましといった課題も抱えています。その課題を解決する手法として導入が広がっているのが、顔認証による本人確認と勤怠管理システムの連携です。
本稿では、顔認証でどのように勤怠管理をするのか、メリットなどについて、解説します。
勤怠管理システムとは
勤怠管理システムとは、従業員の出勤・退勤の時間などを管理する仕組みのことです。
働き方改革関連法が2019年より順次施行され、残業時間に上限規制が設けられたほか、勤務と勤務の間の適切な休息、有給休暇の取得など、労働に関する細かい決まりごとができました。これを受け企業は、従業員の労働状況をリアルタイムで詳細に管理することが必要となっています。
勤怠管理システムを導入すると、労働状況を把握できるほか、勤務時間や賃金を集計する手間を省けることができます。そのため、従来のタイムカードや出勤簿などを使った勤怠管理に代わり、多くの企業が勤怠管理システムを導入しています。
勤怠管理システムには、従業員がPCなどからアクセスし出退勤時間を打刻するものや、ICカードをカードリーダーなどにかざし、その時間が出退勤時間として記録されるものなど、いろいろなタイプのものがあります。
勤怠管理システムの課題
従業員の労働状況をより便利に管理できる勤怠管理システムですが、課題もあります。
- カードを忘れたり紛失したりした際の対応が必要
ICカードを使う場合、カードを忘れてしまう可能性もあるほか、紛失や盗難のリスクもつきまといます。その場合は、総務や人事などの担当部署が対応しなければなりません。例えばカードを忘れた場合に仮カードを貸し出ししたり、紛失や盗難の場合にカードの停止や再発行の手続きをしたりする必要があります。
- 不正な打刻やなりすましの可能性がある
PCなどからシステムにアクセスして出退勤を申告するタイプの場合、IDやパスワードを伝えて他人に打刻してもらうことができてしまいます。また、仕事が残っているけれど残業時間の上限を超えそうな場合、退勤ボタンを押してそのまま仕事をするいわゆる「隠れ残業」をする従業員もいるかもしれません。
さらに、ICカードをカードリーダーなどにかざして出退勤管理をするタイプの場合は、カードの貸し借りも可能です。他人のカードを使って出退勤の打刻をしても、システム上察知することは通常できません。
実際の勤務時間とシステム上の勤務時間とのズレは、本来許されることではありません。例えば過重労働による体調不良など問題が起きた際、企業側の管理責任が問われるなど、問題となる可能性もあります。やり方によって、本来の勤務時間より長く申告することも、短く申告することも出来てしまうことから、従業員の労働状況を正確に把握する上で課題が残ります。
- カードリーダーにかざすための手間がかかる
ICカードによる出退勤の打刻は、カードリーダーにカードをかざす必要があるため、出入り口で場合によって手間取る懸念があります。カードのしまい場所がわからずカバンの中をあさったり、大きな手荷物を持っている際にいちいち荷物を降ろしたりすると、スムーズな入退室の妨げになってしまいます。例えば、朝の出勤ピーク時、入口に列ができてしまうことも考えられます。
顔認証と勤怠管理システムの連携
こうした課題を解決する方法として注目されているのが、顔認証と勤怠管理システムの連携です。
顔認証とは、データベースに登録された顔の情報と、カメラが検知した顔の画像や映像を照らし合わせて本人確認をするものです。指紋認証や静脈認証など、身体の要素を用いて個人を認証する、生体認証システムのひとつです。
この顔認証と勤怠管理システムを連携させることで、より適切で正確な勤怠管理を実現することが可能となります。
- 顔認証により本人確認をした時間を出退勤時間として打刻する
- 顔認証による入退室管理と組み合わせ、本人確認できた際に出入り口を解錠し、解錠した時間を出退勤時間として打刻する
など、いろいろな連携のタイプがあります。
顔認証による勤怠管理のメリット
では、顔認証を用いて勤怠管理をすることで、具体的にどのようなメリットが考えられるのでしょうか。主なものを紹介します。
- 余計な業務コストを軽減できる
顔認証による勤怠管理では、出退勤の打刻にICカードのようなものを必要としないため、置き忘れや紛失・盗難などのリスクがありません。仮カードの貸し出しやカード再発行といった、トラブルへの対応が不要となるため、余計な業務コストを軽減することができます。
- 不正やなりすましを防ぐ
顔によって本人確認をするため、他人による出退勤の打刻や、他人のカードを使った打刻のような、なりすましができなくなります。また、入退室管理とかけあわせた場合は、出入り口の解錠と出退勤打刻がセットになるため、退勤打刻後に建物内でこっそりと仕事を続ける「隠れ残業」もできません。不正な打刻や他人になりすました出退勤申告を防ぐことができます。
- スムーズな出入りを実現できる
顔認証であれば、カードを探すのに手間取ったり、荷物を上げ下ろししたりする心配はありません。出勤者が多いピークの時間帯でも、スムーズな出入りを実現することができます。また、顔認証の中には、歩いたままで顔を認識できるウォークスルー認証の機能を備えたものもあります。立ち止まることなく、出入り口を歩いてそのまま通過するだけで出退勤の打刻が可能となります。
- 従業員の健康管理ができる
新型コロナウイルス感染症の感染拡大が懸念される中、非接触で本人確認ができる顔認証は、より衛生的に勤怠管理をすることができます。また、顔認証システムの機種によっては、本人確認時にあわせて体温チェックができるものもあります。出勤時に温度が高い従業員を検知してアラートを出すなど、勤怠とあわせて従業員の健康も管理することができます。
まとめ
- 勤怠管理システムとは、従業員の出勤・退勤の時間などを管理する仕組み。働き方改革関連法が順次施行され、従業員の労働状況を把握する必要があることから、多くの企業が導入している。
- 勤怠管理システムには、カード貸出や再発行などの業務コスト、不正やなりすましなど、課題もある。
- 顔認証を用いて勤怠管理をすることで、余計な業務コストを減らすほか、不正やなりすましを防ぎ、出退勤申告の利便性を高めることができる。また、顔認証システムのタイプによっては、従業員の出退勤とあわせて健康管理も可能。