オフィスや店舗など、さまざまな場所で活用が広がる顔認証システム。導入したいけれど、どのくらいコストがかかるのか気になる、費用がネックとなりなかなか踏み切れない…そんな企業もあるかもしれません。
そうした際に大きな助けとなる、「補助金」の存在をご存知でしょうか。
補助金は、申請して審査に通れば、一定の金額が交付される制度です。返済の必要がないため、事業者は、設備投資や販路拡大などに関する費用負担を軽くすることができるのです。
本稿では、事業を後押ししてくれる補助金について、概要や対象となる事業、申請から交付までの流れなどについて、解説します。
補助金とは、「国や自治体のさまざまな政策目標を達成するために、企業や個人事業主の取り組みをサポートするための制度」(経済産業省・中小企業庁「ミラサポplus」より引用)です。
補助金には、目的によっていろいろな種類があります。
例えば、「IT導入補助金」では、中小企業や小規模事業者がITツールを導入する際に支援を受けることができます。
業務効率化や売上向上のためにいろいろなソフトウェアやシステムを導入したいと考えても、費用の面で二の足を踏んでしまう場合もあるかもしれません。
そんな際にこの補助金制度をうまく活用することで、費用の一部を補助金として受け取ることができるのです。
融資ではなく給付されるものなので、返済する必要がなく、事業者にとっては大きな助けとなります。
しかし、申請すればだれもがもらえるわけではありません。事業計画書などの申請書類を提出した後に審査があり、補助金の対象として「採択」される、つまり選ばれる必要があります。
あくまで、政策目標を達成するための制度なので、目的によっていろいろな仕組みがあり、対象となる事業も異なります。
また、補助金ごとに、補助率や金額の上限などが決まっており、事業にかかる費用の全てがもらえるとは限りません。
さらに、補助金が交付される時期も、申請した事業を実際に始めた後になります。
そのため、採択されたとしても事業をスタートする時点では必要な費用を事業者が立て替える必要があります。
補助金と似た制度に、助成金があります。
助成金も同じく返済の必要がないお金をもらえるものですが、助成金には補助金のような採択という段階がありません。
補助金は、一定の要件を満たした上で、さらに複数ある申請の中から審査によって選ばれる必要がありますが、助成金の場合は要件を満たしていれば基本的に受け取ることができます。
また、補助金は主に、事業推進やものづくりといった経済産業省系の事案が対象となります。一方で助成金は主に、雇用や従業員教育といった厚生労働省系の事案が対象となります。
財源についても、違いがあります。
国の補助金は財源が法人税となるため、法人税を滞納している事業者は申請ができません。また、都道府県の補助金では、事業所税滞納があると申請できないケースが多くなります。
対して助成金の財源は雇用保険料です。不当解雇など労働関係の法令に違反している事業者には支給されません。
それでは、実際にどのような種類の補助金があるのか、一部の補助金をみてみましょう。
中小企業や小規模事業者がITツールを導入する際の支援をする補助金です。
国のサイトでは、いろいろなケースが事例として紹介されています。
例えば、勘に頼った経営を改め、経営の見える化を目的に販売管理システムを導入したケースや、働き方改革に関連してタイムカードと給与管理システムを連動させた勤怠管理ツールを導入したケースなど、いろいろな場面で補助金が用いられています。
また、顔認証に関連する商品やサービスの一部も、このIT導入補助金の対象となっています。
審査に通る必要がありますが、顔認証システムの導入を検討している場合は、補助金をうまく活用することで費用負担を抑えることが可能です。
こちらは、中小企業等による生産性向上に向けた取り組みを支援する補助金です。
新しい事業を創出するための設備投資やサービスの開発、試作品の開発などに関してサポートを受けられます。
同じく事例として紹介されているのは、果樹園が金柑を急速冷凍する機械を導入したケースや寝具店が店舗販売強化のために寝心地を計測するセンサーを導入したケースなど。
ものづくり補助金は応募件数が多く人気の高い補助金で、採択率は年度によって異なりますが30~40%程度。採択されるためには、ものづくり補助金の趣旨を踏まえて事業計画書作を作成することが求められることから、サイトには事業計画書を作る際のポイントなども紹介されています。
(経済産業省・中小企業庁「ミラサポplus ものづくり補助金①」参照)
小規模事業者持続化補助金は、経営計画に基づく販路拡大や業務効率化を支援する補助金です。
従業員の数が商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)の場合5人以下、それ以外の業種の場合は20人以下の小規模事業者が対象です。
この補助金では、店舗の改装やWebサイト作成、展示会出品などに関する費用を申請できます。
また、これまで消費税を納税していなかった免税事業者が適格請求書発行事業者(インボイス転換事業者)に転換する場合には、補助金の上限が上乗せになるので、申請を検討している事業者は確認をおすすめします。
オンライン資格確認とは、「マイナンバーカードのICチップまたは健康保険証の記号番号等により、オンラインで資格情報の確認ができること」(厚生労働省「オンライン資格確認の導入について」より引用)。保険医療機関・薬局は、2023年4月からオンライン資格確認の導入が原則として義務付けられています。
この導入のためにかかる費用の一部について、補助金を受け取ることが可能です(保険医療機関や薬局以外の一般企業は対象となりません)。
補助金の申請には、顔認証付きカードリーダーの設置など、オンライン資格確認等事業が運用可能な環境を整備することが必要です。また、設備導入や申請の時期、補助金の上限などもケースによって細かい決まりがあります。対象となる医療機関や薬局は、関係機関などに確認することが大切です。
では、実際に補助金を受け取るには、どのような手続き等が必要なのでしょうか。流れに沿ってご紹介します。
補助金には、先ほどご紹介したもの以外にも、政策目的によっていろいろな種類があります。対象となる事業や補助される金額、申請期間などもさまざまです。
また、国による補助金だけではなく、独自の補助金制度を設けている自治体もあります。一覧や目的別に検索できるサービスなどもあるので、事業にあったものをまずは探しましょう。
目的にあった補助金が見つかったら、次は申請です。
事業計画書や応募申請書など必要な書類を揃え、事務局に提出しましょう。
書類に不備があったり期限に遅れたりすると、採択されるのはかなり難しくなってしまいます。公募要領をよく確認しましょう。
また、前述したように、採択されるには補助金の目的に沿った、説得力ある事業計画書の作成が必要になります。ケースによっては行政書士や中小企業診断士などの専門家などに相談するのも効果的です。
お伝えしたように補助金は、申請した事業者の全てが受け取れるわけではありません。補助金をもらうためには、審査を経て、採択される必要があります。
審査に必要な期間について明確な決まりはありせんが、大体数週間から数ヶ月程度かかるようです。
審査の結果については、選定結果通知書が事務局より送られてきます。
また、採択された後も、それで終了ではありません。補助金を受け取るための手続きである交付申請などが必要となります。
無事に採択されたとしても、補助金はすぐには交付されません。
まず、交付申請などの手続きと合わせて、採択された事業を実際に行う必要があります。
交付よりも先に事業を実施する必要があるため、補助金が採択された場合でも、必要な経費について最初は事業者が立て替えなければなりません。あくまで補助金は、事業を行ったあとから交付されるものです。
また、事業をスタートした後に、やむを得ず提出した事業計画などから変更する場合には、こちらも手続きが必要となります。
注意が必要なのは、実際にかかった経費について、証拠となるものが求められる点です。
補助金の対象となる経費については、全て領収書や関係する書類を残し、大切に保管しておきましょう。
実績報告書や領収書などのエビデンスによって、実施した事業の内容や経費を報告します。
正しく事業が実施されたかどうかを検査するために、書類の確認やヒアリングなどによる検査が行われます。確認できれば、補助金額の確定です。
請求書を提出し、ようやく、補助金を受け取ることができます。
補助金によっては、補助金を受け取った後も、定期的な事業の状況報告や収益納付が必要となる場合があります。
手続きのわずらわしさはあるものの、補助金は、事業者にとって大きなメリットがある制度です。
採択されれば、費用面でサポートを受けながら新しいチャレンジや業務改善をすることが可能となります。
顔認証は、業務の効率化や生産性向上、より深いマーケティングなどを目的に、さまざまな業種で活用が広がっています。
導入を希望するけれど費用が気になるという事業者は、補助金の活用も検討材料の一つとしてはいかがでしょうか。