日常生活の中で頻繁に起こり得る商業施設での迷子や、病院や老人ホームで行方不明になる高齢者など、 以前ならば、迷子の居場所を突き止めることは困難でした。しかし、技術の進歩により、迷子の居場所を特定することがより簡単になりました。
AI人物追跡技術とは、人工知能を使って歩行者を識別・追跡する技術で、現在では監視・セキュリティ用途に広く利用されています。ショッピングモールで迷子になった子供が発見された例で、一般的なAI人物追跡技術を3つご紹介します。
人物の再照合は、人物の全身映像を通じて複数のカメラ間で追跡することで、異なるカメラ内に映る同一人物を見つけることです。これは、外見や他の特徴(服装、身長や歩き方)に基づき、さまざまなカメラから人物を照合します。例えば、大型商業施設に複数のカメラが設置されている場合、ある監視カメラの映像から迷子の子供の姿を発見し、その姿を手がかりに、商業施設内のすべてのカメラで撮影した映像内を検索して子供を探し、子供の足跡を時系列で表示することで、すぐに子供の位置を特定することが可能になります。
一般的な人物再照合システムでは、まず1台のカメラが人物を検出・追跡し、次にシステムはその情報をもとに他のカメラで同一人物を照合します。カメラデバイスの違い、人物の外見的特徴(服装や姿勢)、撮影範囲、不明瞭さ、画角等の影響を受けやすく、スマートビジョンの分野では、人物の再照合は実用的かつ挑戦的な課題となっています。
これらの課題を克服すべく歩行者再識別システムは、特徴抽出・計量学習・深層ニューラルネットワークなどの高度なAIアルゴリズムと技術を駆使して、人物の外見から固有の特徴を抽出、異なるカメラ間で視覚的比較を可能にするシステムです。
ターゲットの画像がなくても、特徴(例:性別・年齢・服装・所持品)さえ分かれば、すぐに人物属性認識技術を使用して監視映像からターゲットを追跡できます。例えば、保護者が迷子の属性(例:緑のTシャツに青いジーンズ・野球帽をかぶった男の子)を説明するだけで、警備員が人物属性認識技術を使ってショッピングセンター内のカメラで撮影されたすべての映像を検索し、迷子の居場所を特定することができるのです。
人物属性認識技術は深層学習や機械学習により、識別および個人の関連属性(例:性別・年齢・服装・所持品)を特定することで監視映像から条件に合う歩行者を探し出します。この技術により迷子や容疑者を探し出すことが可能です。
人物追跡技術において、顔認証はカメラが捉えた人物の顔の認識を担う技術です。監視カメラの映像では、顔がはっきり写らないこともありますが、顔がはっきり写っている場合もあります。このような場合、迷子の顔が写っていれば、顔認証技術を応用して、捜索の精度を大幅に向上させることができるのです。
なぜ、人物追跡技術が迷子の捜索にふさわしいのでしょうか。それは、高齢者や幼児・認知症など、行方不明の際に、人物追跡技術を活用することで、捜索時間の短縮と捜索範囲を狭めることができ、捜索の効率性を高め行方不明者を探しだす取り戻す好機を逃さないからです。
3つの技術について下記にて詳しく説明します。
迷子が各カメラに残した映像から、施設内の各カメラで同じ人物を探し出すことができ、それにより迷子の居場所をより早く発見することができます。
捜索が容易ではない人混みの中でも、保護者が迷子の性別・年齢・服装・所持品等の特徴を提供し各カメラの画像から条件に合った人物を特定することで、迷子の捜索を早めることも可能です。
顔認証技術は、顔の特徴を特徴値として読み取り、あらかじめ登録された顔画像と比較することで識別する生体認証技術の一種です。この技術を活用して、録画された映像から迷子の顔の特徴を特定し、迷子の位置をより正確に特定することができます。
上記のような状況による迷子追跡の用途では、高齢者や幼児が多く集まる場所や歩行者の通行量が多い場所での運用が最適です。
サイバーリンク の独自開発「People Tracker」は3つのAI技術を統合しています。中でも人物の再照合(Person Re-ID)および人物属性認識(PAR, Person Attribute Recognition) の大きな特徴は顔認証が不要である点です。身体的特徴で特定の人を追跡できるため、ユーザーの安全が確保され、個人情報に対する懸念も解消されます。
People Tracker の技術は、AIコンピュータビジョンで監視カメラの映像をリアルタイムに解析し、体型・性別・年齢・服装・帽子・バッグ等の身体的特徴から特定の人物の足跡を特定します。主要なビデオ管理システム(VMS,Video Management System)と連携することが可能です。
People Trackerは、一般的によく耳にする顔認証とは異なり、顔以外の人間の特徴で追跡することができ、顔がはっきり写っていなくても、強力なコンピューティング性能により特定の人物の足跡を追跡・記録することができます。また、エリアや範囲による制限を受けることがなく、施設内全てのカメラから行方不明者を探し出し、48時間以内の全ての動向を追跡することができます。さらに、サイバーリンクのスマートセキュリティ及びアクセス制御を目的として設計された顔認証ソリューション FaceMe Securityと組み合わせることで、よりスマート且つ安全なセキュリティ環境の構築を実現します。
人物追跡技術は、迷子の捜索だけでなく、交通手段の主力となる駅や空港・人の多い商業施設など、人の往来が多い日常のさまざまな場面で活用できます。行方不明者の追跡用途以外にも、警察が容疑者を追跡するのにも役立ち、安全を高めることができるのです。また、人物追跡技術は、セキュリティ監視・歩行者の統計・交通制御など、幅広い分野で非常に有効的に活用されています。このように、人物追跡技術は今後、非常に多様な応用が期待され、その将来は非常に有望であると言えます。