人手不足の解消や、生産性の向上などを目的に、さまざまな場所で取り入れられるようになったロボット。レストラン、公共施設、オフィスなど、活躍の場は広がり、働くロボットを日常的に目にするようになりました。
このロボットに顔認証システムを取り入れることで、ロボットを活用できるシーンがさらに広がることが期待されています。ロボットが顔認証システムを備えることで、いったいどのようなことができるようになるのでしょうか。
ロボットと顔認証システムの連携で期待されるメリット、実際に活用されている事例などについて、詳しく解説します。
ロボットには、産業の効率化や自動化のため工場などでものづくりをする産業用ロボットと、それ以外のいわゆるサービスロボットがあります。
経済産業省が2019年に発表した「ロボットによる社会変革会議 報告書」では、「従来のロボットの活用は、主として生産性向上が目的。近年、ロボットを介して、社会とのつながりを創造する新たな取組が生まれつつある」として、人間と関わるさまざまなロボットが紹介されています。
主にサービスロボットの分野では、顔認証システムと連携し、個人を判別できる確認ができるロボットが登場しています。本人確認ができるということは、すなわち、目の前にいる人がいったい誰なのか、ロボットが認識できるようになるということ。一人ひとりにあわせた対応やサービスの提供をロボットができるようになるのです。
このため、顔認証システムと連携することにより、ロボットの活躍の場がより広がることが期待されています。
ロボットにこの顔認証システムを連携させるためには、ロボットにカメラを搭載し、目の前にいる人物の顔画像をカメラから入手します。そして予め登録されている顔の情報と照合することで、ロボットが人物を特定できるようになります。
顔認証をつけることで、ロボットが目の前の人物にあわせた動きができるようになり、単なる人手不足解消や生産性向上に留まらない、より大きな役割を担うことができるようになります。
ロボットに顔認証システムを連携させることで、具体的にどのようなメリットが考えられるでしょうか。主なものをご紹介します。
顔認証がついたロボットは、目の前にいる人物を特定することができます。それにより実現するのが、その人にあわせたコミュニケーションです。例えば「〇〇さん」と名前で呼びかけたり、前に話した情報から「〇〇はどうでしたか?」と質問したり、その人個人に紐づく会話などができるようになります。
店舗などで、顧客個人に向けたサービスを提供することも可能です。顔情報を登録済みの会員顧客が来店した際に、購入履歴からその会員に向けた商品をレコメンドしたり、特典対象になるキャンペーンを紹介したりすることが可能となります。顔認証によって本人確認をすることで、顧客情報と紐づけられた情報を用いてロボットが丁寧に接客をするのです。
会話や情報提供だけではなく、ロボットの行動そのものを相手によって変更できるのも大きなメリットです。例えば警備ロボットの場合、事前にブラックリストやホワイトリストを作成し、それぞれの顔情報を登録しておけば、警備対象のエリアに関して、より高いセキュリティーレベルを実現できます。
カメラがついているため、もし顔情報を登録していない顧客が来店した場合に、その場で登録を促すことも可能です。人手を介さず、顧客の詳しい情報を本人同意のもと来店時に入手できるのは、大きなメリットのひとつです。
オフィスやホテルの顔として来客対応などをする受付。この受付業務に、顔認証付きのロボットが活用されています。
あらかじめ予約のある来訪者や宿泊客の顔情報を事前に登録することにより、ロボットは誰が来たのかを確認し、目の前の相手にあわせた必要な情報を案内できるのです。画一的な対応ではなく、名前で呼びかけたり、時には大事な顧客に対して特別なウェルカムメッセージを伝えたり、ホスピタリティあふれる受付対応がロボットにより実現します。
またホテルでは、顔認証によってドアの解錠施錠を行うことで、宿泊客が鍵を持ち歩くことなく部屋を出入りし、施設内の売店で手ぶらで決済することも可能になります。
癒し効果などが注目され、大切な家族の一員として注目を集める家族型ロボット。人形や動物などの愛らしい姿で、コミュニケーションを取れる機能が人気ですが、この家族型ロボットでも顔認証がついているものが登場しています。
相手を認識して名前で呼びかけてくれたり、個別の会話が成立したりすることで、より高度なコミュニケーションを取れるようになっています。このような家族型ロボットは、通常は足元ぐらいの大きさで、利用者が抱き上げて話しかけるなどロボットが利用者を見上げるシーンが多いことが想定されます。そのため、角度のついた顔も認識できる顔認証システムが必要になります。技術の進歩により、真正面の顔だけではなく角度のある顔も認識できるようになったことから、こうした顔認証つきの家族型ロボットが実現しています。
介護施設で働く顔認証つきロボットも登場しています。
高齢者が暮らす入所型の施設では、ロボットが夜間などに施設内を巡回し、予め顔情報を登録している入所者を見つけると、部屋に戻るよう促します。施設にとって大切な夜間などの見守り業務を、ロボットが行ってくれるのです。また、入所者だけではなく、入所者の家族の顔情報を登録しておくことで、施設に部外者が家族を装って侵入することをロボットが防いでくれます。介護施設で働くロボットは、入所者の安全を守るだけではなく、介護現場における深刻な人手不足の救世主としても期待されています。
警備の世界でも、さまざまなロボットが働いています。
建物の中や警備対象になっているエリアを、自律移動が可能なロボットが巡回し、異常がないかを見て回ります。前述したようなブラックリスト・ホワイトリストの顔情報を登録しておけば、ロボットが本人確認し、特定人物を見つけた際に通報したり、外部の不審者の侵入を防いだりしてくれます。また、警備ロボットには、他にもさまざまな機能を備えたものがあります。例えば、ガスや火災を検知して、異常がある場合に避難誘導をするロボットや、タッチパネルにいろいろな情報を表示して施設内を案内できるロボットも登場しています。
顔認証により、目の前の人が誰なのかを認識できるようになったロボット。個別のコミュニケーションや情報提供が可能になり、ますます活躍の幅が広がっています。ロボットがより身近になり、一緒に働いたり、暮らしたりすることが珍しくない時代。ロボットのさらなる進化が期待されます。