顔認証によるホスピタリティとは、顔認証システムの特徴をいかして、利用者により快適で安心安全な体験を提供するものです。
顔認証による「おもてなし」とも呼ばれ、今、観光地などを中心に、活用が広がっています。ホテルでのスムーズなチェックインや売店での手ぶら決済などが可能で、顧客や利用者に快適に過ごしてもらうことができますが、効果を最大限発揮するには、注意も必要です。
本稿では、顔認証とホスピタリティサービスについて、仕組みや実用例などをご紹介します。
顔認証によるホスピタリティの例
ホスピタリティを目的とした顔認証の活用は、さまざまなシーン・業種に広がっています。以下、主な実例を見てみましょう。
- ホテル
顔認証によるホスピタリティの代表例ともいえるのが、ホテルでの活用です。事前に顔とクレジットカードなどの支払い情報を登録することで、フロントでのチェックインやチェックアウトを、顔認証で行うことが可能になります。またルームキーの代わりに顔認証を用いた客室の出入り、ホテル内の施設利用などにも導入されています。
- レストラン
顔認証を導入することで、レストランでも、より質の高いおもてなしを実現できます。同じく顔や支払い方法を事前に登録することで、利用客は財布やカードを取り出すことなく決済を済ませることが可能です。また、店側も、顧客の過去の利用状況などをあわせて把握することができます。そうした情報を活用することで、常連客への挨拶や、好みに応じたおすすめなど、きめ細かいサービスを提供することもできます。
- イベント会場
コンサートやスポーツ大会など、大規模なイベントでも顔認証により参加者の体験を大きく改善することができます。多くの参加者がいても長時間待たせることなくスムーズな入場管理が可能で、また不審者が紛れ込む懸念もなくなります。
東京2020オリンピック・パラリンピックでも、入場者の管理に顔認証による本人確認が導入され、話題となりました。また、チケットを購入し顔情報の登録をした人のみに会場への入場を許可するため、チケットの不正転売防止にも大きな効果を発揮しています。
- 地域一体での導入
顔や支払い方法の情報を1回登録するだけで、一定地域の複数施設が利用可能になる、顔認証を用いた地域活性化も始まっています。
例えば空港、レンタカー、ホテル、観光施設など業種の異なる施設が参画し、その地域を訪れた人が顔と支払い情報を1回登録するだけで顔認証によりそれぞれの施設を利用できる仕組みです。
利用者は、財布やチケットなどを取り出すことなく、顔認証のみで施設の出入りから決済まで済ませることができるため、便利で快適な旅を楽しむことができます。
こうした取り組みは全国各地で始まっており、遠方からの観光客や長期滞在者の増加などに期待が寄せられています。
ホスピタリティのために、顔認証を利用するメリットとは
ホスピタリティ実現の観点で、顔認証はどのようなメリットがあるのでしょうか。
- 利便性が高く、利用者に快適な体験を提供できる
大きなメリットの一つは、利用者の利便性の高さです。ホテルに導入した場合、宿泊客は、事前に顔とカード情報などを登録すれば、フロントの長い列に並ぶことなく専用端末などを使ってチェックイン手続きが可能です。
また、客室にも顔認証が導入されていれば、ルームキーをわざわざ持ち歩く必要がありません。例えば、宿泊者の人数よりも鍵の数が少なく、部屋の出入りで苦労したという経験はないでしょうか。
顔認証を導入すれば、大浴場に行って、外で鍵を持っている人と待ち合わせをしたり、鍵を持っている人より先に出てしまい、わざわざ時間をつぶしたりといったわずらわしさもなくなります。時間を気にせず、好きな時間に部屋を出入りし、ゆったりと過ごすことができます。
ホテルだけではありません。レストランや売店での前述したような手ぶら決済、空港でのスムーズな搭乗手続きなど、顔認証によってわずらわしさを解消し、便利で快適な体験をすることができます。
- より質の高いサービスを提供できる
顔認証による「おもてなし」とも呼ばれるように、顔認証によるホスピタリティでは、本人確認の機能をいかした、より質の高いサービスを提供することが可能になります。
前述したレストランのように、顧客の属性や過去の利用状況を把握することで、その人の好みにあわせた商品のおすすめなど、一人ひとりにあわせたきめ細かいサービス提供ができるようになります。
- 業務の効率化ができる
顔認証によるスマートなチェックインや受付、決済などを実現することで、業務のコストを減らすことができます。これまで人手を使って行ってきたフロントでの受付や会計といった業務を効率化することで、その分、人間にしかできない接客などの業務を手厚くし、より質の高いおもてなしをすることも可能です。
- 衛生的で安心安全なおもてなしができる
顔認証は、本人確認のために何かに触れる必要がありません。コロナ禍で接触に対する心理的な負担が高まり、より衛生的な対応が求められる中、安心安全を提供できる顔認証は、ホスピタリティあふれるおもてなしとして十分な効果が期待できます。
ホスピタリティ実現に必要な、顔認証システムの条件とは
こうした顔認証のメリットを最大限に発揮し、ホスピタリティを実現するためには、顔認証システムの精度や機能が必要になってきます。
ひとくちに顔認証といっても、本人確認の精度やスピードはさまざまです。例えば、飛行機の搭乗手続きで、本人確認に時間がかかってしまったり、本人と認識できなかったりしてしまうと、せっかくの旅が台無しになってしまいます。
また大規模イベントでも、多くの人が安心して効率よく入場できるようにするためには、十分な顔認証の精度とスピードが必要です。
さらには、マスクをつけたまま本人を確認できるか、なりすまし防止機能があるか、なども確認が必要です。
ホスピタリティあふれるおもてなしを実現するためにも、利用場所やシチュエーションをよく確認し、十分に目的を果たせる機種を導入することが大切です。
まとめ
- 顔認証によるホスピタリティとは、顔認証システムの特徴をいかして、利用者により快適で安心安全な体験を提供する取り組み。
- ホスピタリティを目的とした顔認証の活用は、ホテル、レストラン、イベント会場など、多くの業種・場所に広がっている。
- ホスピタリティの観点で顔認証を用いると、利便性が高く利用者・顧客に快適な体験を提供できる、より質の高いサービスを提供できる、業務の効率化ができる、衛生的で安心安全なおもてなしができるといったメリットがある。
- 顔認証のメリットを最大限に発揮し、ホスピタリティを実現するためには、十分な精度や機能が必要。