近年、AI顔認証技術はディープラーニング型の出現により、精度面での飛躍的な進歩を遂げました。
スマホのアンロックやパスワードの管理を顔認証で行うなど、多くの人々が日常生活で顔認証に触れる機会も多くなってきており、最近では空港等の顔パスゲート以外でもオフィスビルの入退管理や、マンションのオートロックの解除、テーマパークやイベントの入場等にも顔認証技術が使われ、実際に皆様が顔認証による入場管理等に触れる機会も増えて来ているかと思います。
これまでの顔認証技術は2020年に大きな転機を迎える事になります。
それが新型コロナウィルス感染症による誰もが日常的にマスクを着用するの「ニューノーマル」時代の始まりです。この「マスクの着用が当たり前の日常」は、いままでの顔認証を使用したプラットフォームに致命的な影響を与えました。そもそものところ、顔認証の利便性とは「記憶不要、持ち運び不要、非接触で高速」が売りの認証技術だったはずだというのに、「マスクを外してもらう」というコロナ禍においては非常にネガティブな1ステップが必要となる事によって、結果的に問題アリな認証技術となってしまったのです。
では、従来の顔認証エンジンの場合、どうしてマスクをしてしまうと顔認証が出来なくなってしまうのでしょうか?
顔認証の仕組みを簡単に説明すると、顔の「眉毛、目、鼻、口、ほうれい線、輪郭」などパーツ位置から特徴点という判定ポイントを作成し、登録済の顔と比較して全体の特徴点のどれ位一致するかという特徴量の比較で同一人物であるかを判断するというものです。この特徴点をマスク着用の顔で作成しようとした時、FaceMeを含む多くの顔認証エンジンでは、特徴点を作成する重要な顔のパーツが失われてしまい、そのままでは顔認証が困難になります。これはマスクを着用する事によってほぼ顔の50%以上の面積が覆い隠され「鼻、口、ほうれい線、顎回りの輪郭」といった特徴点を作成する上での重要なパーツが同時に欠損する事によって、顔認証が可能な限界の特徴量50%を割ってしまい、結果として「マスク顔の顔認証はできない」という自体が発生してしまうという事になります。
さてこの「50%の壁」ですが、逆に考えると顔の面積や重要なパーツが50%を下回らければ、通常の顔認証は成立します。
例えば、メガネの有無から来るレンズの屈折による特徴点の変化程度では顔全体の特徴量から見れば殆ど影響がありません。同様にサングラスなど目の特徴点が完全に取得できない状態であっても、顔認証の限界である50%を超える事は無いので問題無く認証する事ができます。ではヘルメットや帽子の場合ですが、この場合は「かぶり方」や「カメラの角度」によって影響が変化しますが、ちょっと眉毛が隠れてしまう程度では通常影響はありません。これらの組み合わせると「帽子を深く被ってサングラスをする」等のスタイルでは顔認証が困難となるケースが発生する可能性が高いです。
殆ど影響なし
単体であれば大丈夫
一般的なメイクの工程において、すっぴんとフルメイクの比較では印象が大きく変わる場合が多いと思います。
特にコスプレメイク等ではカラーコンタクトやカラフルな色使い、目元を大きく見せる工夫などによって同一人物とは全く判別できない場合なども多くあるでしょう。
通常人間の視点では、メイクによる「印象」による認識が強くでる為、イメージが大きく変わるメイクでは人物の判断が困難になるという現象があるかと思います。しかしAIを使用した顔認証においては、この人間から見た「印象」という点は殆ど判断されず、純粋に数値化されたパーツ毎の特徴点で比較します。大胆に印象が変わるようなメイクを行っても、実際にはメガネの場合と同様に顔認証の成否にはあまり影響はありません。
ところで、以前「もしもAI動画大賞」というテレビのバラエティ番組で、コスプレメイクの人物を顔認証で見破るという企画に参加させて頂きましたが、番組の中で第1戦のプロによるコスプレメイク変装をFaceMeが見事に見破る事ができましたが、第2戦の「特殊メイク」対決では見破る事が出来ずに敗れるという展開がありました。何故「特殊メイク」ではFaceMeは破れてしまったのでしょうか?
特殊メイクとは、通常のメイクと異なり、顔にシリコン等の当て物を多くする事で顔やパーツの形を替え、「特徴点をずらず」事で全く別の印象の顔を作り上げるメイク技術です。この技法は、ある意味AI顔認証の弱点を突く事により、50%の壁を突破する顔認証では判別不能な顔を作り上げる事は十分に可能であるという結果でした。
殆ど影響なし
程度によるが概ね認証可能
認証できない事が多い
さて、ここまでの内容は従来型の「マスク非対応」顔認証エンジンに関するお話しでした。
2022年以降、顔認証技術の主流はアフターコロナ仕様の「マスク対応顔認証エンジン」となっています、主要な顔認証ベンダーの殆どが「マスク対応」を完了しています。弊社のFaceMeも他社に先駆けていち早く「マスク対応」を打ち出した事によって、市場の認知度を上げる事が出来きた実績があり、アフターコロナでの様々な利用シーンで使用されています。
この「マスク対応」のエンジンですが、各社色々なアプローチがあるかと思いますが、基本的な考え方は「鼻、口、ほうれい線、顎回りの輪郭」などマスクによって隠匿されてしまう部分をあらかじめ除外して、「目の回り」部分を中心として、より高解像度な特徴点として取得して特徴量を比較するという手法で顔認証が行われています。顔認証の精度に関しては、従来の「マスク無し」状態と比較すると若干落ちますが、実用的には全く問題が無いレベルでマスク着用時の顔認証が可能となります。
この「マスク対応」顔認証エンジンの普及により、従来の顔認証ではマスクによる遮蔽が原因で導入が困難であった病院や工場など、新しい業界への顔認証システムの導入需要が急速に拡大する事となりました。
実際に医療現場などでは、手袋を着用する為指紋認証や静脈認証、PIN入力が難しい場合が多くあり、マスクをした状態で非接触による認証が可能な顔認証は多くの需要がありました。また、工場などでは安全面などからマスク以外にも帽子やヘルメット、防護ゴーグル着用などの着用が必要なケースがあっても、「マスク対応」の顔認証であれば、特定のユーザーシナリオでは対応可能なケースが多くなってきました。
このような多様化する新しい「遮蔽の大きい」認証シナリオにおいて、顔認証の精度を向上するためには、「マスク対応」のみだけではなく「遮蔽の大きい」状況においても安定して顔認証が可能となるようエンジンを設計する必要があります。
FaceMeの最新世代では、このような「遮蔽の大きい」様々な認証シナリオにおいても、高精度で安定した認証が可能となる最新の顔認証エンジンを提供しています。
遮蔽が多い環境でも認証可能なシナリオ(積極認証):
このように本来は顔認証に取って認証が難しい極限的な利用の状況においても、FaceMeは多くのベンダー様から支持され、採用実績を積み重ねています。
このように顔認証エンジンは日々進化を続けており、新しい課題への対応も進んでいます。
皆様の日常においても、顔認証を利用する事により生活がより便利に、仕事をより安全に、セキュリティをより強固にする為、FaceMeは世界最高水準の顔認証をより身近なサービスに利用できるよう、今後もパートナー様とソリューションを展開していきます。