犯罪予防や安全確保目的で顔認証システムを導入する場合の留意事項について
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犯罪予防や安全確保目的で顔認証システムを導入する場合の留意事項について

2024/06/07

近年、技術の進展に伴い、顔認証システムは犯罪予防や安全確保のための有力なツールとして注目を集めています。このシステムは、公共の場や私的空間において不審者や犯罪者を迅速に特定し、犯罪行為を未然に防ぐことが期待されています。しかし、その導入にあたっては、技術的な利便性だけでなく、プライバシー保護や法令遵守など多くの配慮すべき点が存在します。

本稿では、これらの留意事項についての詳細および顔認証システムの適切な導入と運用について解説していきます。

「従来型防犯カメラ」による録画システムの場合

防犯カメラによるセキュリティシステムを導入するシナリオとして、商業施設や駅、空港など不特定多数の人々が出入りするような大規模施設において、犯罪の予防、不審者の追跡、テロ対策など利用者の安全確保を目的として、複数のカメラを設置して映像を記録するといったケースは既に多くの施設で導入されており、日々の犯罪の抑止や犯罪発生時に証拠の記録として活用されています。

このような「従来型防犯カメラ」のセキュリティシステムにおいても、映像に記録される「顔」など個人が特定できる情報は「個人情報」であり、個人情報保護法(法17条1項、法21条)において規定されている「利用目的の通知または公表」を利用者本人に行う必要があります。ただし、店舗にある「万引き防止」目的の防犯カメラ等は「取得の状況からみて利用目的が明らかであると認められる場合」(法21条4項4号)は、利用目的の通知又は公表は不要と考えられており、「隠し撮り」にならないように設置状況が明らかであれば「防犯カメラ作動中」等の記載は不要となっています。ただし、この場合においても記録した映像の管理等については、肖像権やプライバシー侵害にならないよう十分な検討が必要となります。

「顔認証機能付きカメラシステム」の特徴と有効性

顔認証機能付きカメラシステムの特徴と有効性

顔認証とカメラを組み合わせた認証システムとは、検知対象者の顔画像および特徴点データをあらかじめ照合用のデータベースに登録しておき、リアルタイムでカメラより取得した顔画像から特徴点データを作成して照合し、データベースに登録された人と同一人物である可能性が高い場合にアラート通知等がされるシステムと定義されています。

このような「顔認証機能付きカメラシステム」は、犯罪予防や安全確保の観点から即時性能高い非常に有効なシステムであり、人の生涯をとおして変化することが少ない「顔」の特徴を利用して対象者を検知する為、高い精度で検知・追跡を行う事が可能となっている事が特徴です。

その一方で、システムとして撮影された人物がその事象を認知できない状況で、長時間かつ広範囲にわたり、自動的で無差別に追跡が行われる危険性等も指摘されており、利用範囲や利用目的は慎重に取り扱う必要があるとされています。

このような「顔認証付きカメラシステム」の利用範囲に関しては、現在明確な法律が制定されているという訳ではありませんが、実際の運用にあたっては「個人情報保護法」などの法律を遵守する必要があります。

また、現状では「顔認証機能付きカメラシステム」の仕組みが広く認知されていない事により、施設の利用者が「不当に監視されていないか」といった不安を生じさせる恐れがあるため、このシステムを利用する事業者は「個人情報保護法」の義務の履行を遵守するだけではなく、自ら積極的に情報を発信して透明性を確保する事が重要となってきます。

顔認証を施設に導入する為に考慮が必要な事項

顔認証を施設に導入する為に考慮が必要な事項

通知または公表

前項に記載したように、「個人情報保護法」の義務の履行することにより、「テロ防止、万引防止等」というように利用目的を特定した上で、「通知又は公表」をすることで、一般的な商業施設においても「顔認証機能付きカメラシステム」を導入することが可能となります。

  • 利用目的の特定:防止したい事項+顔認証機能を用いている事
    (例:顔認証付防犯カメラシステムを利用した犯テロ防止、万引きの防止等)
  • 利用目的の通知;通知または公表が必要(法21条4項4号には該当しない)
    (例:自社HPに記載、設置店舗でのポスター掲示、問い合わせ先の併記など)

登録における個人情報の扱いと「要配慮個人情報」への注意点

顔認証システムでの検知にはあらかじめ検知対象者を登録する必要がありますが、個人情報保護法においては「利用目的の特定と通知の公表」を行う事により、「本人の同意は不要」で検出対象者をシステムのデータベースに登録することが可能となっています。

ただし、「要配慮個人情報」を取得して登録する場合、取得にあたっては原則として本人の同意が必要となります。人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪歴、犯罪を被った事実等は「要配慮個人情報」にあたります。

例えば、防犯カメラの映像から、経済活動が侵された事実(万引き行為等)を特定して、対象者を顔認証システムに登録する場合、犯罪の履歴にも、刑事事件に関する手続きが行われた事にも該当しない為、要配慮個人情報の取得には該当せず、「本人の同意は不要」で登録を行う事が可能となっています。

実際の運用にあたっては、顔認証システムの導入においての「利用目的」である「予防したい犯罪行為」をあらかじめ明確にし、その予防のために必要な範囲を超えて個人情報が登録されることが無いように登録基準を明確にする必要があります。

また、登録データの保持期間に関して、個人情報保護法においては「〇年以上は登録してはいけない」というような具体的な年数について決めたルールはありませんが、運用基準により保存期間を設定して、個人データを利用する必要がなくなった場合は、遅滞なく消去するように努める必要があります。

  • 顔データの登録:本人の同意は不要(ただし要配慮個人情報は除く)
  • 顔データ保持期間:具体的な期間の制限はなし
    (ただし、利用目的上運用期間を設定して、必要がなくなった場合は遅滞なく削除)

データの共有と管理

顔特徴データを複数の事業者で共同利用する事が可能であれば、犯罪防止の効果を高める事が可能になりますが、他方でこのような個人データが意図せぬ所で共有されるような状況になれば、肖像権やプライバシー侵害、本来の目的用途とは異なったケースでの利用に繋がる可能性があります。

このような事態を防止する為、個人データを共有する場合には、個人情報保護法(法27条5項3号)に基づき、①共有利用をする旨、②共同して利用される個人データの項目、③共同して利用するものの範囲、④利用する者の目的。⑤該当個人データの管理について責任を有する者の氏名又は名称および住所並びに法人にあたっては、その代表者の氏名をあらかじめ通知又は容易に知りうる状態に置かなければなりません。

実際の運用においては、このような利用目的と範囲を明確にして、「店舗間での共有、運用セキュリティ会社への共有」など「本当に必要な範囲に限定」し共同利用のルールを設定して順守する必要があります。

  • 顔データの共有:多店舗間など、特定の目的範囲内での共有は可能
    (ただし、利用目的と範囲の定義、共同利用のルールの設定と順守が必要)

開示請求等への対応

顔認証システムの運用上に記録保持した「保有個人データ」に対して、データの開示請求等の要求を受けた場合、個人情報保護法に従い、請求対象者に関するデータの開示や削除など対応を行う必要があります。また、法令上で対応する義務が無い問い合わせに関しても、顔認証システムへの信頼醸成の観点から、できる限り丁寧に対応していくことが重要とされています。

  • 開示請求への対応:データの開示請求等の要求を受けた場合の対応が必要
    (法令上で義務が無い問い合わせに関しても出来る限り対応すること)

まとめ

まとめ

このように、商業施設や駅、空港など不特定多数の人々が出入りするような大規模施設において、犯罪の予防、テロ対策など利用者の安全確保を目的として顔認証システムの導入は「個人情報保護法」の観点からも可能となっており、既に多くの施設で導入が進んでいます。

その一方で顔認証システムの仕組みや利用範囲が認知されていない事により、施設の利用者が「不当に監視されていないか」との不安を生じさせる恐れがあるため、その印象を払拭する為にも、システムを利用する事業者は「個人情報保護法」の義務の履行を遵守するだけではなく、自ら積極的に情報を発信して利用目的、利用範囲の開示と透明性を確保する事が重要となっています。

内閣府の外局である個人情報保護委員会は「犯罪予防や安全確保のための顔識別機能付きカメラシステムの利用について」公表しており、本コラムもこちらの資料を参考として執筆させて頂いております。

詳細や資料一覧は個人情報保護委員会のページをご覧ください。
https://www.ppc.go.jp/news/camera_related/

顔認証は、生活を便利にし、安全な社会を実現し、より豊かで快適な体験を提供できる、素晴らしいテクノロジーです。

ただし、その活用にあたっては、個人情報の取扱いやプライバシーなどに留意し、カメラの存在を安心して認識してもらえるよう、配慮が必要になります。

十分な情報提供や運用体制の整備を心がけ、顔認証のもたらす価値を最大限に活用していきましょう。

FaceMeは世界最高水準の顔認証をより身近なサービスに利用できるよう、今後もパートナー様とソリューションを展開していきます。

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