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「DXハイスクール」開始、
時代に沿った教育と必要な環境整備とは

最終アップデート 2024年 4月 18日 – by Hiroshi
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「DXハイスクール」開始、時代に沿った教育と必要な環境整備とは

デジタル・グリーン(農学や環境学)領域の人材育成に向けて、文部科学省は、2024年4月から「高等学校DX加速化推進事業」、いわゆる「DXハイスクール」をスタートさせました。

未来を担う人材育成のために、高等学校の教育で何が必要とされているのか、実際にどのような授業や教材を取り入れるべきなのか、DXハイスクールの概要と、求められている教育内容、取り組み例などについて、詳しく解説します。

目次)

「DXハイスクール」とは?

DXハイスクールとは、デジタルやグリーン(農学や環境学)領域といった成長分野の人材育成を目指して、情報や数学などの学びを強化している高等学校1000校を対象に、必要な経費を国が支援するものです。

正式な名称を「高等学校DX加速化推進事業(DXハイスクール)」といい、1つの学校に対して1000万円を上限に、スペックの高いパソコンや3Dプリンタ、動画・画像生成ソフトといったツール整備、専門人材の派遣などに対する費用を国が補助します。

補助を受けるためには、要件を満たして申請し(公募は2月末で終了)、対象の学校として採択される必要があります。

要件の一つは、情報Ⅱや、数理・データサイエンス・AIの活用を前提とした実践的な科目を開設している、もしくは開設に向けた具体的な準備をしていること。情報Ⅱは選択科目で、IT全般や基礎的なプログラミングを学ぶ情報Ⅰの内容をベースに、情報システム、データ活用、コンテンツの創造を目指すものです。

そして二つ目は、デジタルを活用した教育ができる環境整備と、教育内容の充実です。情報や数学、理科などに加えて、探究的な学び・STEAM教育等の文理横断的な学びができる機会の確保などが求められています。

 

参考)文部科学省「⾼等学校DX加速化推進事業(DXハイスクール)」
https://www.mext.go.jp/content/20240131_mxt_koukou01_000033692_001.pdf

取り組みの背景にデジタル・グリーン人材育成の必要性

取り組みの背景にあると考えられるのが、デジタルやグリーンといった成長分野で人材を育成したいという国の方針です。2022年には3002億円の補正予算が組まれ、現在およそ35%にとどまる理系分野の学生の割合を上げるため、大学での関係学部新設などを財政支援する取り組みが行われています。

あわせて、そうした学部に進学する学生を増やすためには、高校でも対策を講じる必要があります。中央教育審議会の「高等学校教育の在り方ワーキンググループ」が2023年に出した中間まとめでは、大学で理系分野などへの再編が進められている一方で、高校では文理選択で理系を選択する生徒が少ないという調査結果や、企業が今の時代の課題に対応する人材を確保するために、時代に即した教育を学校に求めていることに触れ、「探究的な学び・STEAM 教育等の文理横断的な学び・実践的な学びを推進していくことが必要である」と指摘しています。

こうした動きを受けてスタートした今回のDXハイスクール事業では、成長分野での人材育成を後押しするという狙いがあるものと考えられます。

 

求められている教育内容とは

Demo

それでは、DXハイスクールでは、実際にどのような教育内容が求められているのでしょうか。

前述した、DXハイスクールの申請要件や、中央教育審議会の中間では、「探究的な学び・STEAM 教育等の文理横断的な学び」という言葉が出てきます。

探求的な学びとは、実際の生活や社会との関わりの中で自ら課題を立て、それに関する情報を集めて整理・分析し、その結果をまとめて表現したり、周囲の人と協働して行動する学習スタイルです。課題を見つけたり情報を整理分析したりする上で、知識や技能は欠かせないものですが、いわゆる暗記などをする「知識詰め込み教育」とは異なるものです。変化の激しい予測できない時代で生き抜くための必要な要素として、探求学習は高校に限らず、小中学校などでも取り入れられている学習方法です。

もう一つのSTEAM教育とは、STEM(Science, Technology, Engineering, Mathematics)に加え、芸術、文化、生活、経済、法律、政治、倫理等を含めた広い範囲であるAを加えた造語で、教科の枠にとらわれない横断的な学習方法を指す言葉です。AIやIoTが普及する時代で活躍できる人材を育てるため、こちらも国が推進しています。

DXハイスクールでは、ICT機器やデジタルリソースを活用して、こうした新しい時代に対応した学習に取り組むことが求められています。

 

機器などを選ぶ際のポイント

このような時代に即した教育をすすめるためのDXハイスクールでは、採択されると、機材の購入や業務委託の費用など、必要な環境整備にかかる経費を補助してもらうことができます。それでは、実際に授業で使うICT機器やソフトを選ぶ際は、どのような点に注意をする必要があるのでしょうか。

例えば、文部科学省の資料によると、支援対象の例として、「ハイスペックPC・3Dプリンタ・動画・画像生成ソフト等」というICT機器が挙げられています。例えば、生徒がある社会問題についての研究内容を発表する際、動画や画像の編集ソフトを使って、音楽や映像効果を用いてより創造的な表現を駆使したり、データを使ったグラフなどを使って視覚的にも理解しやすい課題の状況説明資料を作成したりすることが可能です。

一例として挙げた動画や画像の編集ソフトを選ぶ場合にまず確認したいのは、生徒が創造性や表現力を発揮できるような自由度の高い機能や、学習意欲を高めるような魅力的なコンテンツを作れるオプションがあるかという点です。決まった工程をこなすいわゆる「作業」になってしまわないように、そもそもの目的である探求的な学びをサポートしてくれるようなツールを選ぶことが必要です。

さらに、実際に授業で使うためには、教師も生徒も使いやすいものかどうかという点も注意しましょう。操作がわかりづらく、そのソフトの機能を使いこなすことができなかったり、使い方を覚えるのに必要以上の時間を要したりするものは、本来の目的に沿った教育に時間を割くことができません。あまり複雑すぎず、基本的な操作がしやすいものの方が、取り入れやすいといえます。

動画・画像編集ソフト以外にも、今回のDXハイスクールで補助を受けられる対象はたくさんあります。ICT機器の導入や専門人材の派遣など、幅広く認められる可能性があるので、学習の目的や実際の利用シーンなどを考慮して、あったものを選ぶことが必要です。

 

まとめ

国を挙げて成長分野の人材育成を目指し、新たに始まる「DXハイスクール」。未来を担う人材の育成を目指し、デジタルツールやICT機器を活用した、新しい教育が求められています。

生徒の能力や可能性を引き出し、新しい時代に向けた力を身につけるためには、どのような学習が適しているのか、充実した教育の実践に受けてどうやって環境整備をしていくのか、学校それぞれの今後の取り組みが注目されます。



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