オフィスや商業施設、オンラインでの本人確認など、活用シーンが広がる顔認証システム。高いセキュリティレベルなど多くのメリットがある一方で、導入には注意が必要な点もあります。

顔認証システムの利点をいかしてより大きな効果を発揮するためには、デメリットについても理解し、適切に活用することが必要です。

本稿では、顔認証のメリットやデメリット、問題点に対する解決策などについて、解説します。

顔認証のメリット

顔認証システムとは、カメラで撮影した映像とデータベースに登録した顔情報を照合し、本人確認をするものです。指紋認証や静脈認証など、身体の要素を用いて個人を認証する、生体認証システムのひとつです。

顔認証システムの主なメリットとしては、主に次の様な点が挙げられます。

  1. セキュリティレベルが高い
  2. 紛失する・忘れるリスクがない
  3. 本人確認する際の利便性が高い
  4. 専用のデバイスが不要
  5. 接触せずに本人確認ができる

以下、順に解説します。

顔認証のデメリット

顔認証には多くのメリットがある一方で、導入する場面によっては、注意すべきこともあります。主なデメリットとして、以下のような点が挙げられます。

  1. 顔情報等、ケースによって個人情報として取り扱う必要がある
  2. プライバシーに配慮する必要がある
  3. 情報漏えいのリスクがある
  4. 認証精度に差がある
  5. 周囲の環境など不確定要素が多い

顔認証のデメリットを克服するために、必要な解決策とは

何か閃いて手を打つ女性

こうしたデメリットに対する解決策として、どのような手法があるのでしょうか。デメリットを理解し、目的にあった機種を選ぶなどしっかりと対応することで、より顔認証のメリットをいかした効率的な利活用をすることができます。

プライバシー、個人情報に対する配慮について

プライバシーに対する必要な配慮や、個人情報としてどのように取り扱うべきかに関しては、経済産業省が作成した「カメラ画像利活用ガイドブック」が参考になります。

ガイドブックでは、カメラを店舗に設置するケースや屋外に向け設置するケースなどを想定し、どういった情報が個人情報に該当するのか、データの利活用をする際に、どのようなことを事前に確認する必要があるのかなどについて、案内されています。

例えば、カメラ画像を取得していることを一目瞭然にすること、サービス上カメラ映像を利活用する目的を明確にすることなど、記載されている必要な配慮は多岐にわたります。もちろん、個人情報に該当する情報を取り扱う際は、個人情報保護法の遵守が必要なのは言うまでもありません。

ガイドラインでは、「機器によって取得されたデータは、ネットワーク化され、組み合わされることにより、様々な価値を生み出すものであり、様々なイノベーションが創出されることが期待されている」とする一方で、「事業者には、生活者の権利や利益を守り、生活者とのコミュニケーション等を通じて、社会からの信頼を獲得しながら事業を推進することが求められている」と注意喚起を行っています。きめ細かい配慮をすることで、顔認証で取得されたデータの利活用の可能性が、より広がると考えられます。

参考)経済産業省「カメラ画像利活用ガイドブックver3.0」

情報漏えいに対する備えについて

前述したように、顔や指紋といった生体情報はパスワードの様に変更ができません。顔情報に限らず、情報を取り扱う場合は常に漏えいのリスクはつきまとうものですが、顔認証においても万全なセキュリティ対策を講じる必要があります。

さまざまなタイプの顔認証システムがありますが、例えば顔の映像をクラウド上に送信し認証するクラウド型に比べて、エッジデバイスに顔認証システムが搭載されているエッジ型の顔認証であれば、ネットワーク接続による情報漏えいのリスクを軽減することができます。タイプによっては、エッジデバイス内で顔認証ができ、一切ネットワークに接続する必要がないものもあります。

またそのほか、生体情報を保存せずに認証するタイプや、顔の情報を暗号化したまま認証するタイプなど、近年は機種によって情報漏えいのリスクをより軽減する技術が多く出ています。必要な対策を講じるためにも、性能をよく確認することが必要です。

また、万が一情報が漏えいしたときに備えて、情報漏えい発生時の対応方法や、責任の所在、報告すべき箇所などを平時から明確にしておくことも大切です。

認証精度の問題に対する選択肢について

認証制度の問題は、用途にあわせ十分な精度を兼ね備えた機種を選ぶことで解決できます。

技術の進化により、マスクやヘルメットなどを着用したままで認証できる機能や、立ち止まらずに認証できるウォークスルー認証などが開発され、いろいろな状況で認証ができるようになっています。また、加齢により顔が変化しても間違えずに本人と確認できるものや、顔写真を使ったなりすましに騙されず生体の場合のみ認証するものなど、さまざまなシチュエーションに対応できるようになっています。

顔認証を導入したい場所の明るさ、認証したい人物の状況などシチュエーションをよく確認し、利用目的を満たす認証精度を持った機種を選ぶ必要があります。

FAQ

顔認証の認証精度は、システム、機種によってさまざまな違いがあります。メーカーによっては、顔認証システムの精度に関する世界的な権威の一つ・アメリカ国立標準技術研究所(NIST)による、顔認証精度の測定結果を数値で公表しているところもあります。メーカーに問い合わせるなどして、導入前に出来ること・出来ないことを確認することが大切です。
クラウド型は、認証にネットワークに接続する必要があるため、不正アクセスなどに備える必要があります。一方、エッジ型は、クラウド型よりもネットワーク接続による危険度は低くなりますが、エッジデバイスを物理的に盗まれたり失くしたりするリスクに備える必要があります。どちらのタイプでも、情報を扱う以上100%漏えいがないとは言えず、機種の特性を理解し、漏えいリスクを減らす対策を講じることが必要です。
セキュリティ対策や業務効率化などに対する意識の高まりに伴い、顔認証システムの活用シーンは広がっています。
例えばオフィスでは、出入り口にカメラを設置して勤怠管理を行ったり、社員による貸与端末や社内ネットワークへのアクセスに顔認証を用いたりする企業が増えています。
金融機関では口座開設をする際に顧客が店舗に出向かず本人確認ができる仕組みとして活用しているほか、店舗では予め顔情報を登録した顧客がキャッシュレスで決済することもできます。
他にも、空港での搭乗手続き、工場での有資格者確認、チケット転売防止を目的としたイベント会場での本人確認など、さまざまな場面で顔認証が導入されています。

まとめ

斜め上を見上げて顔認証するOL