オンラインショッピングに代表されるeコマースの売り上げは、10年以上にわたって急速な成長を続けており、昨今の感染症状況においてそのスピードはますます加速しています。推定では、2020年のeコマースの売上高は全世界市場の売上高の21.3%を占めており、前年比で15.8%増加しています。

アマゾンなどに代表されるeコマースの巨大企業は、衣料品や食料品など、従来オンラインショッピングへの移行が難しいと考えられていたカテゴリに浸透するために、迅速な配送システムや、柔軟な返品ポリシーなどの戦略を導入してきました。

店舗での顧客体験を競い合っている伝統的な小売業者にとって、最新の戦略の導入は生存のため必要不可欠となっています。例えばシアーズ(Sears)は、メールカタログを使用した通信販売のパイオニアとして知られていました。しかし、最新テクノロジーの導入や顧客体験のアップデートに立ち遅れた結果、eコマースによる競争に晒され、その立場を崩壊させてしまいました。また他にも、当初はデジタルへ順調に移行しているかに見えたものの、eコマースの競争が激化するにつれて、最終的には顧客を失ってしまったメイシーズ(Macy’s)のような企業もあります。一方で、ノードストローム(Nordstrom)は同様の課題に直面しながらも、オンラインでの存在感を維持しつつ、AR(拡張現実)メイクアップカウンターなどの魅力的な買い物体験を生み出し、顧客を店舗に呼び戻すことに成功しています。

現在、多くの小売業者がシームレスなオンラインからオフライン(O2O)のショッピング体験を構築するため、セルフチェックアウト端末や、QRコードによる情報提供などのテクノロジーの導入を進めています。一方で、完全に自動化されたAmazon Goストアのように、よりアグレッシブなテクノロジーソリューションの導入によって、未来の新たな小売体験の道が切り開かれつつあります。

昨今の感染症状況における課題

昨今の感染症状況によって、小売店舗は安全を確保しながら、いかにして顧客を店舗に引き付け続けられるかという大きな課題に直面しています。

今日、買い物客は入店の際にマスクの着用を義務付けられ、入店前の体温確認や、手指の消毒を求められています。一部の店舗では、客同士の接触を最小限に抑えるために、店舗の出入り口や店内の移動ルートを制限しています。国や地域によっては、店舗面積あたりの最大収容人数が制限されている場合もあります。

店舗スタッフは、タイムカードやPOS端末、その他共有スペースの使用、現金の処理などの業務プロセスのすべてにおいて、接触によるウイルス感染リスクを最小化するための見直しを迫られています。また、スタッフは時にマスクを着用していない、または鼻や口を適切に覆っていない顧客に応対しなければならないため、高い感染リスクに晒されてしまうこともあります。

多用途店内ソリューションとしての顔認証

顔認証の導入は近年急速に進んでおり、感染症対策、店舗のセキュリティ、マーケティング、および顧客データの分析などを実現できるオールインワンソリューションとして注目を集めています。

革新的な顔認証技術によって、ヘルスケアやセキュリティといった機能以外に、店内でのショッピング体験を向上させるための様々な機能が提供されます。

VIP会員サービス

あらかじめ登録を行った顧客は、顔認証により、パーソナライズされたVIP会員体験を得ることができます。VIP会員が店舗に入ると、スタッフはアラートを受信して、顧客へ挨拶したり、お気に入りのアイテムや売り場を案内したりすることができるようになります。また、会員登録を行った顧客は、店舗の端末やデジタルサイネージで、会員限定のオファーやパーソナライズされたおすすめ情報を得ることができます。会計時に、会員カードの提示や電話やメールなどの情報入力なしで、特典やプロモーションを自動的に適用することもできます。

スマートデジタルサイネージ

店舗に設置されたデジタルサイネージで顧客の性別、年齢、表情、および登録会員であるかどうかを判別し、パーソナライズされた情報を表示することができます。同様に、デジタル端末を使用して顧客に対しておすすめ情報を提供したり、顔認証決済を使用して、非接触で会計を済ませたりすることが可能になります。

テイクアウト、店頭受け取り

オンライン注文商品の店頭受け取りは、大手チェーン店から小規模店舗、ブティックなどに至るまで、小売業者にとって重要な購入チャンネルになっています。顔認証によって、登録された顧客と関連する注文を即座に識別することができるため、メールや電話番号といった個人情報を声に出して伝える必要がなくなります。

データ収集・分析

顔認証対応のカメラによって、顧客の店内移動、平均滞在時間、年齢、性別、表情などの重要な統計データを得ることができます。店舗管理者はこのデータを活用して、顧客にとってより便利となるような商品の配置や店舗レイアウトなどを考案し、店内でのショッピング体験を向上させることができます。

感染症対策のための顔認証ソリューション

昨今の感染症状況において、顔認証はより安全な店舗環境を作り出すためにも役立っています。

健康状態の確認

店舗の入り口に設置された端末によって、入店する前に顧客の体温やマスクの着用状態を確認し、手指の消毒を促すことができます。これにより、店内にいる顧客の安全が確保されるとともに、専任のスタッフによるこれらのチェックの必要がなくなり、ウイルス感染のリスクを抑えることができます。

マスク着用状態の確認

店舗全体に設置された顔認証対応のカメラによって、店内にいる多くの人に対して同時に継続的なモニタリングを実行し、マスクを着用していないなど、健康上のリスクをもたらす可能性のある人物を検出した場合に、担当者に即時にアラートを送信できます。FaceMe® のような高度な顔認証を搭載したカメラは、マスクを着用していない人物だけではなく、鼻や口が完全に覆われているかどうかなど、着用状態が適切かどうかも検出できます。

従業員の管理

従業員が専用の入り口から入店する際に、顔認証を搭載した端末によって、ドアのロックを解除する前に体温をチェックし、マスク着用と手指の消毒を指示することができます。勤怠管理システムと統合することにより、非接触で従業員の出退勤を記録することもできます。また、プリンターと接続することで、入店時に健康状態をチェックしたことを示すリストバンドを印刷することもできます。一例として、FaceMe® が導入された大規模ショッピングモール向けの従業員スクリーニングシステムでは、入店した従業員は端末を通して出勤の際の手続きを行います。マスク着用状態と体温のチェック、健康状態に関する質問、手指の消毒、および従業員の身元確認が行われ、これらのチェックをクリアした後、従業員はその日用のリストバンドを受け取り、他の従業員や買い物客に、健康状態に問題がないことを示すことができます。

セキュリティや運用のための顔認証

小売店舗における顔認証のもう一つの重要な用途は、セキュリティの向上による資産と製品の保護と、運用コストの削減です。

ブラックリストに登録された人物の識別

顔認証ソリューションを搭載したカメラは、過去に万引きなどの問題を起こした人物等のブラックリストに登録された人物の入店を検出した場合に、直ちに警備員にアラートを送信することができます。このアラートには人物のID、店内の場所といった情報とともに、担当者が適切に対応できるよう、ブラックリストに登録された理由などの但し書きを追加することもできます。

制限エリアのセキュリティ

多くの小売店舗やショッピングモールには、従業員、管理者、または特定の資格を持つ従業員のみが立ち入りを許可されるエリアが存在します。各制限エリアのドアに顔認証を備えたセキュリティカメラ、またはスマートロックを設置し、許可された担当者に対してのみドアのロックを解除することができます。顔認証が統合されたシステムは、何者かが制限エリアへの侵入を試みたり、あるいは侵入した場合に、セキュリティ担当者にアラートを送信することができます。同様の仕組みは、許可された人物が潜在的な危険を伴うエリア(冷凍庫など)に滞在している時間を計測し、滞在時間が長すぎる場合にアラートを送信するなど、安全対策としても機能します。

従業員の出退勤管理

顔認証対応のカメラは、従業員が仕事に入るタイミングを正確かつ非接触で記録することで、タイムカードの打刻漏れや紛失などの問題を回避し、従業員の利便性を高めることができます。

レジやPOS端末のセキュリティ

顔認証をレジやPOS端末に統合することで、許可された従業員のみが適切な時間枠で使用できるようにすることができます。特定の取引や払い戻しなど、マネージャーの承認を必要とするような場合は、キーやカードの代わりに顔認証を使用することができます。

酒・たばこ購入時の年齢確認

顔認証技術とIDカードリーダーを組み合わせることで、購入にあたって年齢確認の必要な商品が未成年に販売されることのないよう、高精度で検証することが可能となり、店舗管理者の負担を軽減することができます。

小売店舗への顔認証の導入

既に防犯カメラを導入している小売店舗やショッピングモールなどでは、多くの場合、既存のカメラやコンピューターに顔認証技術を統合することができます。比較的小規模な店舗の場合、FaceMeなどの優れた顔認証ソフトウェアをWebカメラが搭載されたPCにインストールするか、ドアや入り口の近くにある1台のカメラに統合することで顔認証を使用することができます。大規模なショッピングモールなどの場合、顔認証をカメラシステム全体とサーバーインフラストラクチャに統合することで、マスク着用状態監視などの機能を施設全体に導入することができます。

顔認証と小売店舗の未来

顔認証が小売店舗に広く展開されるまでには、まだしばらく時間を要するかもしれませんが、このテクノロジーはすでに感染症対策、セキュリティ、データ収集・統計などの用途で幅広く活用されています。FaceMeをはじめとする柔軟で正確なソリューションにより、世界の多くの小売業者が顔認証の恩恵を受けることができるようになりつつあります。

昨今の感染症状況において、小売業者は運用コストを削減しながら、顧客を店舗に呼び戻すための戦略を必要としています。顔認証は、これらの課題を克服するための重要な解決策となります。

顔認証の概要、その仕組み、および導入方法については、エッジデバイスによる顔認証をご覧ください。

2021年に顔認証がどのように使用されているかについては、「2021年における顔認証の展望」を参照してください。